アリババ、5億人のデータを「リアル」活用 商取引の転換目指す【アジア特Q便】

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、フィリップ証券(香港)のルイス・ウォン(Louis Wong)氏が中国インターネット通販最大手、アリババ集団の動きをレポートします。

 

2016年開催のアリババ集団のフォーラム「雲棲大会」で、馬雲会長は初めて「ニューリテール(新小売り)」というコンセプトを打ち出した。その戦略の一つが、オフライン企業への投資や買収を通じてオンラインとオフラインの業務を結合するというものだ。百貨店業態がアリババによる従来のリテール改造の最初の試験場となる。アリババは14年3月に香港株式市場に上場していた中国百貨店大手の 銀泰商業に53億7000万香港ドルを出資し、同社の2番目の大株主となった。さらに17年5月には同社の株式を非公開化した。

「生活選集(ハウスセレクション)」はアリババと銀泰商業が提携する新たな小売りプロジェクトだ。生活選集は16年12月、銀泰商業の浙江省杭州市の武林店内に1号店を開設した。面積約1200平方メートルの店内に並ぶ商品はいずれも、アリババ傘下の通販サイト「天猫(Tモール)」の良質な「淘(タオ)ブランド」。ホームテキスタイルや食器・調理具、家具、児童用品、ペット関連のほか、撮影といったクロスオーバーなサービスを含めた6つの商品群をそろえている。

ハイパーマーケットとショッピングモール内スーパーは、アリババによる従来のリテール改造の2つ目の試験場となる。アリババは17年11月、約224億香港ドルを投じて高キン零售(サンアート・リテール)の株式36.16%を直接的、間接的に取得すると発表した。サンアートは中国最大規模のハイパーマーケット運営企業で、「欧尚(オーシャン)」「大潤発(RTマート)」という2大ブランドで全国29省・市・自治区にハイパーマーケット446店を展開している。16年度の売上高は1000億人民元を超え、長年に渡り中国小売業界でトップシェアを維持している。

その後、アリババはサンアートに対して同社発行済み株式すべてをまとめて買収すると提案した。しかし、結果はサンアートの発行済み株式の約0.0032%の30万3600株を取得したにとどまった。このため、サンアートは引き続き香港株式市場で上場を維持している。

サンアートの非公開化に失敗したものの、アリババはわずか1カ月でアリババ経済圏の5億人を超える消費者や数百万社に上る販売業者、クラウドプラットフォーム、ビッグデータのリソースが、大潤発のサプライチェーンの店舗ネットワークにダイナミックに融合しつつあることを明らかにした。ネットスーパー「天猫スーパー」 の100万点を超える精選された商品が大潤発の20都市にある店舗167軒に導入されたと発表した。

調査研究機関のリポートによると、日用消費財(FMCG)分野の約1割の消費者がサンアート(欧尚+大潤発)の消費者であると同時に、淘宝(タオバオ)系列(天猫+淘宝)の消費者でもある。このため、両社の提携は相乗効果を生み、新たな市場の獲得が可能だという。両社は今後さらに、かつてない消費体験を消費者に提供するべく、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった新たな技術を提供していくとみられている。

一方、アリババ集団は引き続き、ニューリテールの事業組織の変更を進めていく。同社はこのほどクラウドリテール事業部と天猫、淘宝とを全面的に合併させると発表した。天猫のニューリテールプラットフォーム事業部がアリババ集団のクラウドのインフラ設備やデジタル化能力、ビッグデータのリソースを統合することになる。

アリババはクラウドリテール事業部のニューリテール業務とデジタル業務の全面的な融合で、オンライン・オフライン一貫のより完備されたサポートを世界のブランドに提供し、商取引(コマース)全体の大転換をけん引すると表明した。同時に世界のブランドとともに、最先端のニューリテール業態を通じ、より高い消費者ニーズを満たしていくとも述べている。

※アジア特Q便は、QUICK端末で先行してご覧いただけます。

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