ドル円、一時108円台 米財務長官のドル安容認発言でどうなる?

24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、41ドル31セント(0.15%)高の2万6252ドル12セントで終えた。金融株が強くダウの上昇をけん引したが、主力ハイテク株が弱く、ナスダック指数はザラ場の史上最高値を更新したものの、4日ぶりに反落した。

ウィルバー・ロス米商務長官が24日、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)が開かれている現地スイスでの記者会見で「中国は直接的な脅威となっている」と述べたことが伝わり、保護主義への警戒感から米株は引けにかけて売られる展開となった。

この日のダウの上昇寄与度トップはゴールドマン・サックスで38ドル押し上げ要因となった。半面、下落寄与度トップはアップルで19ドルほどの上値抑制要因となった。バーンスタインが23日付のリポートで、昨年12月から2018年3月までのiPhone販売台数が33%減りそうだと弱気な見方を示したことが嫌気された。2018年1-3月期のiPhone販売台数について5100万~5700万台になりそうだと指摘し、市場予想(6200万台)よりも弱い数字を見込んだが、アップルの投資判断のアウトパフォーム、目標株価195ドルは維持した。

一方、野村インスティネットは24日付のリポートで、iPhone出荷台数を例年並みに下方修正した。ベライゾンでの買い替え率が2017年10-12月期(4Q)に7.2%にとどまり、2014年のiPhone 6発売時の9.8%、6s、7の8.4%・8.3%を下回ったといい、中国市場でシェア拡大が鈍っている状況を打ち消すのには不十分などと指摘。投資判断のニュートラル、目標株価175ドルは維持した。

アップルを巡っては、ロングボウ・リサーチが17日に投資判断を引き下げたほか、22日にアトランティック・エクイティーズが投資判断をオーバーウエイトからニュートラルに引き下げ。24日にもJPモルガンがiPhone Xに関して「最上位機種の出荷は今年は横ばいになりそうなことがはっきりしてきた」と弱気な見方を示すなど、2月1日の決算発表を前に市場の一部で慎重な見方が増えている。

この日、スティーブン・ムニューシン米財務長官の発言が市場を騒がした。ダボスで「ドル安は貿易にとって良いこと」、「長期的には、強い米経済を反映してドルは強くなる」と述べ、足もとでドル安が進んでいる状況を容認するかのような発言をしたことからドル売りの動きが活発化した。

ドル円は108.965円(3時22分)まで円高・ドル安が進行。ドル指数(DXY)は大幅に3日続落。QUICK FactSet Workstationによれば89.25まで下げ、2014年12月以来、3年1カ月ぶりの安値水準を付けた。

ドル指数
トランプ米大統領は25日にダボスを訪れる予定で、米国第一主義を掲げるトランプ氏に先立ってムニューシン氏がダボスでドル安誘導を図ったかのような状況だ。

米経済専門チャンネルのCNBCは専門家の見方として、「米財務長官は短期的な為替の動きに対して『見て見ぬ振り』(benign neglect)しており、止めようとしてない」と基軸通貨の番人であるムニューシン氏の対応を警戒する声を伝えていた。周知の通り、ムニューシン長官はゴールドマン・サックス出身。大先輩のロバート・ルービン元財務長官のように、昨年4月の英フィナンシャル・タイムズ紙電子版のインタビューでは「強いドルは良いことだ。米国経済の強さ、信頼を示す機能がある」と発言していた。

かつてはドル高誘導発言をしていたが、中間選挙を控えた今年は米国の景気回復を優先してか、短期的なドル安を容認、むしろ歓迎したいのかも知れない。しかし、米債が売られ、金利が上昇局面にある状況で安易なドル安容認を続けるのは危険な対応とみられ、米金利の急騰を招けば新興国の株・債券・通貨や米国内の住宅市場にも悪影響が出る恐れがある。

オクスフォード・エコノミクスは24日付のリポートで、ダボス会議で保護主義的な発言がロス長官から出たことを踏まえ、「これらの強いシグナルからは、米政権が国際的な貿易問題に関してさらなる権限を行使しようとしているのがうかがえる」と指摘した。トランプ大統領は23日に洗濯機や太陽光パネルに関するセーフガードに署名したばかり。リポートでは「まず第一に、保護主義によって輸入価格が上昇し、消費者物価指数(CPI)の上昇に影響が出るだろう。第2に、諸外国が報復措置をとる恐れがある。そして第3に、米国は孤立し、最近のドル安によってサポートされていた米国債買いが活発にならないリスクがある」と警鐘を鳴らした。

米ブルームバーグが今月10日、「中国の外貨準備に携わる政府高官が米国債の購入の減額や停止を提案している」と事情に詳しい関係者の話を元に伝え、その後、ロイターが11日に「中国が米国債の購入減額を検討しているとの報道は間違った情報に基づくもの」と報じたばかり。貿易問題で中国への制裁が強化されるのではないかとみられる状況下、中国による米債購入で情報が錯綜した経緯がある。17日に発表された対米証券投資動向で中国の米国債保有額はほぼ横ばいだったが、保護主義的なスタンスを鮮明にしているトランプ政権に対し、中国などがけん制してくる恐れがあり、市場のボラティリティを高める可能性がある点に注意したい。

(QUICKデリバティブズコメント)

※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

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