18日の東京株式市場で日経平均株価は1991年11月以来、約26年2カ月ぶりに心理的な節目の2万4000円を一時上回った。米国を中心とした世界的な株高が日本株にも波及している。「今は理屈抜きで買わないと勝てない相場」(国内ヘッジファンドの売買担当者)――。市場は強気論にあふれる。だが、冷静に眺めると警戒シグナルも点灯している。
「3兆円を超える信用取引の買い残(未決済残高)の一部が解消され、需給バランスを崩す可能性がある」。東海東京調査センターの仙石誠マーケットアナリストは気をもむ。
仙石氏がみているのは、信用取引を利用して株式を買った投資家全体の評価損益率だ。株価が買いコストを上回れば、プラス、下回ればマイナスになる。QUICKによれば12日時点ではマイナス3.63%と7週連続で改善し、マイナス幅は2014年1月17日申し込み時点(マイナス2.66%)以来、4年ぶりの小ささとなった。
個人を中心に信用取引では短期売買が一般的で、評価益はすぐに実現益にかわるため、信用買い残は通常は含み損状態だ。日経平均が年間で19%上昇した17年でも評価損益率の年平均はマイナス8.1%。リーマン・ショック時の08年10月にはマイナス40%まで悪化したこともある。そのため評価損率がゼロに近づくかプラスに転じると、「経験則的に相場は天井圏」と理解される。
マイナス2%台まで改善した14年1月のケースだと、日経平均は13年6月の1万2000円台から14年1月の1万6000円台まで急上昇したが、その後、2月前半にかけて1万4000円割れの水準に急落した。
松井証券によると同社顧客の信用買いの評価損益率は、9日に13年5月22日(プラス3.25%)以来となるプラスに転じ、16日はプラス0.66%まで改善した。「利益はすぐに確定したい投資家が多く評価益の持ち高はすぐに解消されるためプラスになることは異例」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)。
テクニカル分析指標でも過熱を示すシグナルがみられる。日経平均の200日移動平均からの上方かい離率は16%台と過熱ゾーンとされる15~20%に突入した。前回15%を上回った17年11月や16年12月のケースでは、その後に相場は短期的な調整局面に入った。
テクニカルアナリスト自らが、「いまの日本株は米国株の上昇に引っ張られているだけで、日本株のテクニカル指標は有効ではない」(みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリスト)と漏らすほど強い相場だが、「好事魔多し」は世の常でもある。
【日経QUICKニュース(NQN) 張間正義】
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