国内自動車メーカーを巡っては、2018年も世界的な電気自動車(EV)市場の拡大への対応が投資家にとって最大のテーマだ。出遅れたとの見方もあるトヨタ(7203)について、2017年の日経ヴェリタスの自動車アナリストランキング2位、野村証券の桾本将隆(くぬぎもと・まさたか)氏=写真=は「車を販売するだけでなく付随サービスにも積極的」と評価し、EVでも強みを発揮するとみる。目標株価は9000円と、現時点から2割近い上昇を想定している。桾本氏にインタビューした。
――車の電動化ではどのメーカーが有望でしょうか。
「18年の株式市場では、ハイブリッド車(HV)やEVなど電動車分野での成長力がポイントだ。生産して販売するだけでなく、自動運転やライドシェアなどの(付随する)モビリティーサービスも見据えて積極的に取り組むメーカーは限られる。最有力銘柄はトヨタだ。もともとEVに強い日産自(7201)も評価が高まるだろう」
――まだEVを発売していないトヨタは出遅れていませんか。
「投資家の間ではEVとHVは対立する技術との見方が強かった。だが、実際はモーターなど共通の技術は多くHVで先行するトヨタはEVでも有利だ。次世代の電池とされる全固体電池を基礎技術から手掛けるなど保有する特許件数でみても大きな差別化を図れる。リチウム電池ではパナソニック(6752)と提携しており、他社に遅れはない。投資家の誤解は消えつつある」
――トヨタ株が一段高となる条件はなんでしょう。
「トヨタは17年12月、EVを含む電動車の30年の販売目標を現在の4倍近い550万台へ引き上げた。世界最大の家電見本市(CES)では自動運転のEVを発表している。こうした取り組みが収益に貢献してくるとの具体的なイメージを持つ投資家が増えれば、株高につながるだろう」
――他のメーカーはいかがですか。
「スズキ(7269)やSUBARU(7270)はトヨタとの提携を生かして高収益が続く。電動車分野で同業他社との提携に消極的なホンダ(7267)については、技術進歩が早いだけに優位性を出していけるのか試されている」
――ガソリン車を含む米国の販売動向はどう予想していますか。
「米国市場全体の販売台数は17年からほぼ横ばいとみている。多目的スポーツ車(SUV)は競争が激化する一方、米国メーカーが力を入れていないセダンはトヨタのカムリやホンダのアコードのような最新モデルが順調に伸びるだろう。セダンについては18年に採算が改善し、トヨタやホンダ、日産自の収益を支える」
――リスクはありますか。
「原油価格の上昇が気掛かりだ。ガソリン価格の上昇は今のところ緩やかで消費者の購買トレンドに変化はみえないが、注意は必要だ。米国で販売するSUVなど大型車の販売が減速しかねない」
【聞き手は 日経QUICKニュース(NQN) 太田明広】
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