日銀発の「グローバル・スティープニング」が市場を揺さぶっている。日銀による9日の超長期国債買い入れ減額に端を発した長期金利上昇の連鎖だ。
債券市場の動きをみると、金利の変化は海外の方が大きい。金利上昇幅は、日本の10年債利回りが1bpだったのに対し、米10年債は7.5bp。30年債は日本の2bpに対し米国は8.8bpだった。
LCH-JSCCスプレッド(ロンドンと日本のクリアリングハウス間のスワップレートの差)をみても、拡大基調が続いている。LCHの主要な参加者は海外勢であり、彼らは日本の市場参加者以上に円金利の上昇を見込んでいるということであろう(グラフは、20年スワップのスプレッド)。
◆日本のJGBウオッチャーたちは冷静
仮に今回のベアスティープ化が日銀オペ減額をきっかけとするものならば、海外金利は過剰に反応している様にみえる。ただ、マーケットが反応した以上、日銀としても意識せざるを得ない。野村証券の中島武信氏は10日のレポートで、「今後は輪番減額を行いにくくなる可能性もある」と指摘。特に、日銀が10年に金利操作目標を設定している以上、5-10年の輪番は減らしにくいこといから、「他年限の輪番減額で10年が売られたときは、素直に買いで良い」と見ていた。
また、SMBC日興証券の森田長太郎氏は「超長期の日銀買い入れ減額は特に予想してはおらず、若干サプライズであったことは確か。しかし、減額の理由は恐らく、(1)昨年12月中旬以降、緩やかに進んでいた10-20年フラット化(約56bp→約53bp)への対応、(2)4月以降の超長期国債の月間1500億円ペースの減額への備え、という2つで説明されるだろう」と指摘。さらに「為替市場での突然の円高リアクションの方がサプライズであったと言えるが、為替市場での正常化スペキュレーションの活発化を裏付けるものではあった」と加える。
ただ「欧米債券市場で、日銀オペの影響がどの程度あったのかは分からない。欧州時間開始直後からの金利上昇ではなかったので、後付け的に解説が付いたというのが実際のところではあろう。しかし、2018年という年の投資ないし投機戦略のコアに『正常化トレード』を据える参加者が、グローバル市場において少なくないのは確か」としていた。
◆為替市場では・・・
大きな反応を見せたのは円相場。10日の取引でも一時、1㌦=112円割れを試す場面もあった。JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏は9日付のリポートで「もはや国債買い入れ額は主たる政策目標ではなくなっているのであるから、為替市場の反応は過剰反応と言って良い」と指摘した。
また「円買いの背景には、クロス円、特にEUR/JPY(ユーロ円)の円ショート・ポジションが大きく積み上がっているとの認識があったと考えられる」という。実際、IMMの投機的ポジションから計算したEUR/JPYの円ショート・ポジションは「2007年の円キャリー・トレード活発時のピークに近づいている」という。
その上で佐々木氏は「元々円を買い戻す口実を探していたところにタイミングよく、日銀が口実を提供したというだけだろう」としつつ、「しかし、市場参加者、特に海外の為替市場参加者の日銀に対する注目は高まっているのも事実だ」としていた。
(QUICKデリバティブズコメント)
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