武者リサーチの武者陵司代表は1日に配信したリポートで、「2018年はすべての条件が整い、勇気凛凛新たな船出に向かう、という年になるのではないか。ここ数十年これほどの好条件で新年を迎えることは初めてである。平成最後の年は新たな繁栄時代の幕開けの年である、と考える」と指摘している。周知の通り、日経平均株価が38915.87円で史上最高値を付けたのは昭和64年(平成元年)の1989年12月29日だった。今年は平成30年の2018年で、新元号が新たに決まる予定である。元号の変わり目に大相場があったうえ、今回は改元が2020年の東京五輪の前年となるため、インフラ投資関連の景気浮揚効果が最も高まると期待されている。
<昨年の日経平均の推移>
経済学的には、オリンピックによる景気浮揚効果は開催前が高いというのはよく知られており、五輪開催後は過剰投資を受けて景気が減速するのが通例だ。それを踏まえれば、オリンピック前の大相場は2020年ではなく、2019年にやってくると考えるのが自然である。五輪後も景気が良かった例外としては、2012年に開かれたロンドン五輪が挙げられる。当時はリーマン・ショックや欧州ソブリン危機といった不況要因があったため、五輪前の景気鈍化に加え、不況後の景気回復効果が大きかった。その他、国内の政治要因では憲法改正や9月の自民党総裁選、消費税引き上げ判断を踏まえれば、安倍政権としては景気を良くしなければならない環境でもある。
好調なスタートが見込まれる2018年相場だが、年頭だけに思わぬサプライズ・シナリオにも注意したい。米投資会社ブラックストーン・グループが2日、同社の副会長を務めるバイロン・ウィーン氏のビックリ10大予想2018を発表した。ウィーン氏はベテラン著名ストラテジストとして知られ、その意外な見立てには定評がある。今年にビックリ10大予想は下記の通り。
- 中国は北朝鮮の核開発能力を容認しないと決断
- ブレグジットで欧州大陸諸国は結束
- ドル高が進み、ドル円は120円に下落
- S&P500指数は一時10%調整も年末に3000超え
- WTIが80ドルに上昇
- 米国で平均時給伸び率が年4%に迫る
- 米連邦準備理事会(FRB)は今年4回利上げ
- トランプ大統領、環太平洋経済連携協定(TPP)不参加は失敗と考え始める
- 11月の米中間選挙で共和党は敗退
- 中国の国内総生産(GDP)が5.5%に低下
【出所:https://www.blackstone.com/media/press-releases/byron-wien-announces-ten-surprises-for-2018 】
注目すべきは、3のドル高が進むということ。米国の実質成長率が3%を超え、ユーロドルは1.10㌦に下落し、ドル円が120円までドル高・円安に振れると見込んだ。米国企業によるリパトリエーションが米企業業績を助けるとしたほか、別の項目7ではインフレ率の上昇が懸念要因になるとも指摘している。ジャパナイゼーションの言葉に代表される通り、米国でも労働需給が逼迫する中でインフレ率が上がりにくい状況にあるが、原油高、減税効果による景気回復を受けて思わぬインフレ率の上昇となれば、2017年のドル安というトレンドは反転を迫られそう。ドル安を受けて堅調だったエマージング株式から、日本などの先進国に資金が向かう可能性がある。
市場からは「昨年のような半導体一辺倒の投資戦略では無く、銀行セクターなどリフレの恩恵を受ける銘柄へのシフトを考えた方が良さそうですね」(国内証券)、「FRBが50bpの利上げを行ったら驚きですが、原油が100㌦に向かうような状況になればインフレリスクも警戒されるかも? 東京五輪前の最後のバブル相場を見据え、本命はメガバンク、大穴はREITで良いのでは無いでしょうか?」(別の国内証券)といった声が出ていた。ウィーン氏のシナリオのようにFRBが4回の利上げを行うのかどうかも含めて、今年はインフレとドル安是正がトレンドを占うカギになりそうだ。なおウィーン氏は、追加した起こり得る予想で、「ビットコインのリスクが大きくなり過ぎて当局が取引を規制する」という気になるものも示していた。
※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。