「来年も米景気が上向く兆しが現われている!これも全て我々が推進する減税法案によるものだ。来年は米企業と雇用にとって素晴らしい年になるだろう!米株式市場も恩恵にあやかること間違いなしだ!」――。トランプ米大統領は自身のツイッターで、約30年ぶりとなる米税制の抜本改革を自賛している。連邦法人税率は35%から21%に下がり、米企業の税負担は10年間で6500億ドル(約73兆円)減るとされる。だが足元では、個別株で税制改革が売り材料になる事例も出てきた。市場が注目するのは、税制改革に盛り込まれた利払い控除の上限設定と、法人税率下げに伴う繰り延べ税金資産の縮小だ。
■英蘭シェルが反落 米税制改革法成立の影響で20億~25億ドルの費用計上へ
27日の米株式市場で、英蘭系石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルが反落。66.23ドル(前日比-0.31ドル、-0.46%)で取引を終えた。
米税制改革法の成立を受け、シェルは繰り延べ税金資産の評価額の減少に伴い、2017年4Q(10~12月期)の米税制関連の費用が20億~25億ドルになるとの見通しを示した。
企業は不採算の時期に繰り延べ税金資産を計上し、将来の税負担を軽減するために使うことができるが、税制改革により法人税率が35%から21%に大幅に引き下げられたため、繰り延べ税金資産の価値が帳簿上少なくなり、こうした費用の計上を強いられたという。
■板硝子(5202)、今期純利益一転82%減 米法人減税で繰延税金資産を見直し
板硝子(5202)は27日、2018年3月期の連結純利益が前期比82%減の10億円になりそうだと発表した。従来予想の80億円から下方修正し、一転の減益見通しになった。QUICKコンセンサスの94億円(4社平均)からの下方かい離も一段と広がった。
22日に米税制改革法が成立し、連邦法人税率が35%から21%に引き下げられる。このため米国で発生した繰り延べ税金資産の評価額を見直すことなどが主因。売上高、営業利益の見通しは据え置いた。
今期の業績予想は下方修正したが、特に新たな現金支出は発生しない見込み。加えて板硝子は今後米国で発生する税金費用は削減されるとみている。
■「減税開始前に積極的な損失確定の売り、対象はエネルギー関連企業などか」 グッゲンハイム
独立系運用会社のグッゲンハイム・パートナーズでグローバルCIO(最高投資責任者)を務めるスコット・ミナード氏は27日付のレポートで「米税制改革法案の可決で米景気が上振れると投資家は強気だったが、詳細と実施の時期が明らかになった。一部の投資家は自分の利益を優先して行動するだろう」と指摘した。
損失確定の売りの対象としてはエネルギー、素材、メディア関連の企業を挙げ、「負債が多い企業」とした。
米国の税制ではこれまで、企業の利払い費(支払利息)控除に制限はなかった。だが、今回の税制改革により、今後4年間は年間のEBITDA(利払い・税・償却前利益)の30%が控除の上限となる。2021年以降はさらに厳しくなり、利払い費の控除上限は年間のEBIT(利払い・税引き前利益の30%となる。
ミナード氏は「EBITDAの30%を超える支払利息を控除できないことで、負債の多い企業は影響を受けるだろう」と分析。さらに「資金調達の方法を(借り入れから)増資に移行する企業が出てくる可能性がある」との見方を示した。
【QUICKエクイティコメント&QUICKデリバティブズコメント】
※QUICKエクイティコメント、QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。