アパレル市場が縮小傾向にあるなかで、存在感を強めているのが衣料品通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイ(3092)だ。上場以来、11期連続で最高益更新を見込み、今年8月に初めて時価総額が1兆円を突破した。「ゾゾタウン」は大手セレクトショップと次々と連携し、インターネットで洋服を購入する若年層を囲い込み、高い成長を続けている。独自の採寸基準や写真を駆使したサイトが強みで、過去1年に1回以上購入した会員数は約460万人に達するという。
楽天と異なる物流の仕組み
「ゾゾタウン」のビジネスモデルは仮想商店街の楽天市場と似ているようにみえるが、物流の仕組みが根本的に異なる。楽天市場は商品の発送を各店舗で行うが、ゾゾタウンは各店舗の商品を自社の物流施設で預かり、保管・写真撮影・梱包・発送までの一連の作業を全て代行する。そのたため、ゾゾタウンの受託手数料率は3割弱と利益率が高くなっている。また、受託販売のため、在庫を持つことによる売れ残りリスクがないのも強みだろう。
同社はこれまでもユニークなサービスを打ち出すことで話題になった。商品を注文した日から最長2カ月後まで支払いを延長できるサービスの「ツケ払い」を2016年11月から開始すると、10カ月で利用者数は100万人に達した。「後払い」自体はネット通販の支払い方法として存在していたが、請求書が届いてから2週間内を支払期限とするのが一般的のため、「最大2カ月延長」がインパクトを与えた。貸し倒れへの懸念をする向きもあろうが、利用限度額は税込み5万4000円のためリスクは最小限にしていたといえよう。このツケ払いが奏功する形で、9月中間期は大幅増収増益となった。
今年は宅配便最大手のヤマト運輸が悲鳴をあげたことが話題になったが、これを先んじていたかのような面白い出来事が5年前にあった。2012年10月にゾゾタウンで商品を購入した客が「1050円なくせに送料手数料入れたら1750円とかまじ詐欺やろ~ ゾゾタウン」というツイートすると、 前澤友作社長が即座に反応。「詐欺??ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ。お前ん家まで汗水たらしてヤマトの宅配会社の人がわざわざ運んでくれてんだよ。お前みたいな感謝のない奴は二度と注文しなくていいわ」などと切り捨てた。
この発言がネット上で炎上し、前澤社長は謝罪を余儀なくされた経緯がある。この炎上騒ぎから5年を経て、ゾゾタウンでは2017年10月に購入者が自由に送料の金額を設定できる「送料自由」を試験的に実施。従来は商品の合計代金が4,999円(税込)以上の場合に無料としていたが、商品代金に関係なく買い手が送料を指定。100円~1500円の100円単位の選択肢から決定するか、手入力で0円~3000円で自由な金額を指定できたが、無料を選択する客は約4割に達した。11月からは配送料を一律200円としたうえで、前澤社長は「一部のユーザーに送料無料が当たり前という誤った認識を与えた反省もある。無料で届くわけがないと社会的に認知していただく」とコメントしていた。
プライベートブランドはもろ刃の剣?
11月中旬にはプライベートブランド「ZOZO」を立ち上げたうえで、着るだけで体の寸法を測定できるセンサー付きの「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」の無料配布発表すると注文が殺到。予約開始から8時間で23万件以上の注文が入ったという。これは会社側も想定外の反響だったもようで、発送時期は11月末の予定が来年2月上旬頃へと延期を余儀なくされた。「ゾゾスーツ」 には、伸縮センサーが内蔵されており、トップスとボトムスの上下を着用し、スマートフォンとBluetooth通信で接続することで、1万5000箇所の寸法が瞬時に計測できるという。同社はゾゾスーツの配布により、ファッションECの課題とされる試着ができないことや、サイズ違いによる返品の解消を目指している。
受託販売が主体の同社がPBに乗り出すことは、自社で在庫を抱えることになるだけにもろ刃の剣になるかもしれない。株価の上昇が続くなかでSMBC日興証券は投資判断を「1」から「2」、目標株価を3700円から3500円に引き下げたようだ。これまでの施策の一巡感から商品取扱高の成長率鈍化を想定している模様。株価の上昇でセクター相対パフォーマンスの評価が中位になったとし、投資判断を引き下げたとみられる。
いまのところ国内で向かうところ敵なしにみえるゾゾタウンだが、脅威は世界のアマゾンだろう。アマゾン・ジャパンは、世界最大級の専用スタジオを設立する計画を打ち出すなど虎視眈々と日本市場を狙っており、今回のゾゾスーツがキラーコンテンツとなるのか注目されるところだ。
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