「日本は金融実験からそっと抜け出す」。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が18日夕に配信した記事が市場で話題だ。市場関係者の間では、日本でも金融政策の変更が意識され始めた。日銀は20~21日、金融政策決定会合を開くが、近い将来、長期金利の誘導目標の引き上げや上場投資信託(ETF)の購入減額はあるのか――。買いを見送り、様子を眺める投資家が増えている。
WSJは記事の中で、「18年1~3月期にゼロ%程度としている長期金利の誘導目標を引き上げる」との専門家の見解を紹介した。日銀の黒田東彦総裁が11月13日にスイスでの講演で「金利が下がり過ぎると金融仲介機能を阻害し、金融緩和の効果を反転させる」という「リバーサル・レート」(金利効果の反転)について振れたのが発端だ。
講演があった11月13日を100とした場合、直近で米ダウ工業株30種平均は105に対し、日経平均は101と出遅れが鮮明だ。日銀の金融緩和姿勢の変化を投資家が警戒し始めている。
今週の日銀会合では現状の政策維持を決めるとの見方が大勢だが、実際に現状維持が確認できれば、いったん株を買い戻す投資家が増える可能性はある。
だが、買いが続く保証はない。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは来年、日銀が長期金利の誘導目標を0.25%程度に引き上げる「微調整」を実施すると予想している。
理由はこうだ。米国では物価上昇を抑えていた携帯電話料金の引き下げ効果が来年春以降に一巡する。その結果、米金利が上昇し、外国為替市場で円安・ドル高が進む。円安で日本の物価にも押し上げ要因が働く――という読みだ。
ETF購入を巡っては証券界でも「不要論」や「減額容認論」が増えている。日経平均株価が約26年ぶり高値圏に上昇したためだ。SMBC日興証券の伊藤桂一氏は12日付のリポートで、「株価上昇はファンダメンタルズの改善で説明でき、ETFを減額しても株価への影響は軽微」と分析した。
もちろん現状では、来年も現在の政策維持が市場のコンセンサスだ。「来年、任期を迎える黒田東彦総裁が留任すれば、物価上昇率2%を目指すための現在の政策パッケージの変更はない」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)との見方が多い。
東海東京調査センターの鈴木誠一シニアマーケットアナリストは、「ETFは、よほどの株価上昇が起きない限り、6兆円枠は維持する」と話す。日銀が、わずかな修正でも行えば、市場は株安・円高で反応し、日銀はそうしたリスクを極力、避けたいはずとみているからだ。
ただ、物価圧力が高まれば、金融緩和姿勢に変化が起きるのは自然の流れだ。来年以降も折に触れて、日銀の緩和政策修正への警戒感が日本株の上値を抑える可能性が高い。
【日経QUICKニュース(NQN ) 張間正義】
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