2018年の米株「2割調整も」 ヤコブセン氏の「大胆予測」 円に反動高リスク

日米の主要株価指数は上昇基調を維持したまま年の瀬を迎えた。世界各国で経済成長が持続するとの観測を背景に、2018年も株高継続を見込む声が多数を占めるが、異論もある。デンマークの金融大手サクソバンクのチーフ・エコノミスト、スティーン・ヤコブセン氏は「来年上期に米株は15~20%下げる可能性が高い」と予想する。ヤコブセン氏には毎年「大胆予測」として公表している、市場が過小評価しているリスクイベントについても聞いた。

日経平均とダウ

――市場では世界経済に楽観的な見方が増えています。
「好景気にもかかわらず物価が落ち着いている米国を筆頭に、先進国では熱しすぎず冷めすぎずの適温経済のもとで株高が続くというのがメインシナリオだ。だが私はそうはならないと予想する。世界的に信用収縮が続いているためだ」

「国内総生産(GDP)に占める民間の新規の債務比率が過去9カ月間で15%低下した。中国による引き締め気味の金融政策の影響で、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の縮小を始める前から信用収縮が起きている。この信用収縮サイクルは実体経済に9カ月ほど先行すると考えられ、18年上期に世界経済は下振れする可能性が高い」

――株価調整は避けられないということでしょうか。
「そうだ。実体経済の悪化を受けて株価も調整局面に入るだろう。現在の資産価格は、世界経済に対する『無邪気』な楽観論が前提となっている。市場では、S&P500種株価指数は18年に現状の2670ドル程度から5~10%上がるとの見方が多いものの、個人的には上期には15~20%下げておかしくないと思う」

「もっとも、そこまで株安が進めば各国の金融当局は再び緩和政策を強化するはずだ。信用供与はまた増え、株式相場もある程度は回復するだろう。18年末時点のS&P500種株価指数は今より5%安の水準にとどまると予測する。FRBは来年半ばに正常化から緩和の方に政策を戻す公算が大きい。米10年物国債利回りは、18年末時点で2.00%を見込んでいる」

――ビットコインは6万ドルまで上昇が続いた後に、1000ドルまで下落するとの大胆な予想を示しています。
「ビットコインは昨年終盤の700ドル台に乗せるか乗せないかのレベルから一気に上がった。17年には3倍の2100ドルまで付けるとのリスクシナリオを描いていたが、実際には2万ドルをうかがう情勢だ。長いマーケット経験の中で最も激しいバブルだ。当面、上昇の勢いは続きそうだが、反動のエネルギーもたまっている」

「ポイントは各国で規制が強まるかどうかだろう。規制強化で取引が難しくなれば換金売りなどが加速し、相場は急落しかねない。既に韓国では未成年による仮想通貨の口座開設を禁止するなど、規制を始めた。ロシアでは、当局が独自の暗号通貨発行の準備を進めるのと同時に、ビットコインなどの既存の仮想通貨の規制に向けて動いていると伝わっている」

――欧米主要国も例外ではないということですか。
「ビットコインの存在感が高まるほど、他の先進国でも何らかの規制を増やす可能性は高まる。投資家保護の目的だけでなく、政府や中央銀行にとって重要である税収の最大化や通貨の発行権を脅かしかねない点にも留意しなければならない」

「現時点では仮想通貨市場に積極介入する可能性は低いが、10年もすれば、仮想通貨に関する技術を利用して政府がデジタル通貨や仮想通貨を発行し、国民のお金のやり取りを管理しやすくなるだろう。ブロックチェーン技術により透明性の高い取引記録の作成が可能になるため、汚職の抑制につながる可能性がある」

――日本では日銀の長短金利操作が困難になり、円が1ドル=100円まで上昇するとの思い切った予想も立てていますね。
「まずは円安・ドル高に向かう。米国主導で国債利回りが上昇するなかで、日銀が長期金利を低位に抑えることに固執すれば、円は1ドル=150円を探るかもしれない。だが円安が進む過程で各国からの通貨安誘導批判が強まるほか、輸入物価の上昇を背景に金利が高騰する。最終的に日銀が金利操作を放棄するようだと、円が100円まで反動高を演じるのではないか。大胆予想にはそう書いた」

――国内では、黒田東彦総裁が「リバーサル・レート(金利効果の反転)」に言及して以降、金利調整の思惑が出ています。
「各国中銀の幹部がこうした概念に触れるようになったのは、大規模金融緩和は長期にわたって持続しうるものではない、との認識が強まっていることの表れだろう。あまりに長く続けると、正常化する際のコストが高くなる」

ビットコイン、1000ドルに急落も 18年の大胆予想一覧

■18年の大胆予想

(1)米国で財務省が主導権を握り、FRBが独立性を喪失
18年の中間選挙に向けた人気取り政策や減税で財政が悪化。金利の大幅上昇を受けて財務省は2.5%の利回り上限を設定する。

(2)日銀、統制力を失い長短金利操作の放棄へ
円相場は1ドル=150円台まで下げた後、100円まで急伸する。

(3)中国が人民元建て原油先物取引を開始
原油先物取引の成功で海外勢の人民元需要が増え、対ドルの人民元相場が1ドル=6.0元超の元高・ドル安水準を付ける。

(4)S&P500の「フラッシュクラッシュ」(瞬時の急落)によりボラティリティー(変動率)急上昇
歴史的な低ボラティリティーを招いた欧米の大規模な金融緩和策は転機を迎えた。(変動率が低下した資産の買い入れを機械的に増やす)「リスクパリティファンド」や「ショート・ボラティリティー戦略」への大量の資金流入が、相場が反転したときに振れを増幅させる。

(5)米有権者が18年中間選挙で左傾化し、米国債利回りが急上昇
16年の米大統領選で民主党候補の一人だった、民主社会主義者のバーニー・サンダース氏がミレニアル世代の支持を集めたことを忘れてはならない。財政拡大路線が強まり、米30年物国債の利回りは急上昇して5%を突破する。

(6)「オーストリア・ハンガリー帝国」、EUの敵対的乗っ取りを開始
移民問題などを巡る西欧と東欧の外交的緊張が一段と高まり、ユーロはドルに対して1ユーロ=1.00ドルまで下落する。

(7)政府の規制強化によって投資家のビットコイン離れが進む
対ドル価格は1ビットコイン=6万ドル台まで上昇余地があるものの、その後1000ドルまで下落する。

(8)「アフリカの春」の後、南アフリカもリーダー交代で復活
ジンバブエのムガベ大統領の辞任を契機に、他のアフリカ諸国にも政変の波が起こる。南アではズマ大統領が権力の座を追われ、南アランドが対新興国通貨で30%上昇する。

(9)テンセントがアップルを抑え、時価総額世界トップに
中国の資本市場解放や消費主導型経済への移行が追い風となり、テンセント株の上昇率は100%に達する。

(10)女性が企業内での権力を握る
フォーチュン500社のうち、60社以上で女性が最高経営責任者(CEO)に就く。

【日経QUICKニュース(NQN) 椎名遥香】

※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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