米議会の与党共和党の指導部が15日、35%の連邦法人税率を2018年から21%に引き下げる大型減税法案を最終決定した。減税規模は10年で1.5兆ドル弱となる見込みで、下院は早ければ19日、上院も20日に同法案を採決する方向で調整に入っており、クリスマスまでに成立するのか注目される。
スティーブン・ムニューシン財務長官は17日にテレビ番組に出演し、「議会が税制改革法案を可決することに疑いの余地はない」との見解を示した。金持ちや大企業が優遇を受けるとの批判が出ている中、ムニューシン長官は「税制改革は労働者、労働者の家族に良いことだ」と述べてけん制していた。
ゴールドマン・サックスは15日付のリポートで、「我々は来週に税制改革が成立すると引き続き予想している」としながら、企業の取引に幅広く課税する「物品税」の導入が見送られたことについて「貿易赤字の増加を通じて米国経済に与える影響は国内総生産(GDP)で0.3%の押し下げ要因となる」と指摘した。保護主義的な物品税が見送られたことは国際貿易などには全体的に好影響が見込まれる半面、米国の実体経済には若干、統計上はマイナスの影響が出るもようだ。
市場では税制改革の成立によって材料出尽くしを警戒する向きもあるが、調査会社のエバコアISIは17日付のリポートで「税制改革期待があった一方、インフレ率が上昇して米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが加速するような状況ではなかった」という、これまでの税制改革期待の米株ラリーの経緯を指摘した。実質金利が低く、経済環境のボラティリティが低い状況はセクター/ファクターによる銘柄入替を起こした程度で、市場全体への影響は小さかった旨を指摘し、「結論として、税制改革成立後にボラティティの急上昇に伴うバックドロップは無さそうで、S&P500が2018年に3000に向かうという我々の見通しは馴染んでいるように思われる」と締めくくった。
税制改革の進展によって将来のFRBの利上げ観測が出ることはドルのサポート要因になるとも指摘しており、日本株には好影響が見込まれそう。
外部環境が好転している一方、季節的な要因で年末は株高が進みやすいことも相場の地合いを改善させそうだ。クリスマスから年初にかけて米株が上昇するサンタクロース・ラリーは良く知られているが、アノマリー分析を手掛けるトレーダーズ・アルマナックによれば12月中旬から月末にかけてもNYダウやナスダックは上昇しやすい傾向にあるという。
1950年から2016年(ナスダック指数は1971~2016年)まで12月の前半11営業日の主要指数の傾向をみたところ、当初はいわゆる節税のためのタックス・ロス・セリングで主要指数は弱含む場面があったものの、15営業日ほどでダウやS&P500は前月比でプラスに転じるという。12月中旬の安値から特にナスダック指数は2%ほど平均して上昇するといい、経験則通りならナスダック指数の7000超えにも期待が掛かりそうだ。日経先物が連れ高すれば、掉尾の一振となるかも知れない。
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