楽天(4755)は14日、携帯電話事業への参入を発表した。総務省の認可が下りれば、イー・アクセス(現ソフトバンクグループ)以来、13年ぶりの新規参入になるという。ただ楽天の携帯事業参入について、アナリストの間では比較的厳しい見方が先行している。
ネガティブな見方が多数
JPモルガンは、「自社サービスの普及やエンゲージメントを高めることを目指し、積極的なプロモーションを行う『楽天モバイル』(MVNO事業)で、グループシナジーを活かしユーザー拡大に手ごたえを感じている現状を踏まえれば、さらなるモバイルユーザーの拡大に向けて同社が今回の意思決定を行ったことに違和感はない」と指摘。ただ、当面の設備投資負担や新規ユーザー獲得コストなどを考慮すれば、短期~中期業績へのネガティブな影響は避けられず、また、大手キャリアと互角に戦うことの勝算も決して高いとは言えず、当面株価の重石となる可能性があるとみている。
14日の東京株式市場で楽天株は下落した
ゴールドマン・サックスは、「参入企業が増えること自体は携帯電話業界にはポジティブな話ではないが、既存大手キャリアの収益性に大きな影響を及ぼす存在になるとは現時点では考えづらい」と指摘。その要因として、新規参入キャリアが様々な課題をクリアする必要を挙げた。具体的には①周波数の割り当て申請を経て、総務省が実際に周波数を割り当てるか②インフラ構築が効果的にできるのか③端末購入補助金を大手キャリア並みに出すのか③MVNOと差異化できるサービス体制を構築できるのか④利用者の流動性が低い日本市場で固定費を回収できる十分な契約者をどのように確保するのか――などを挙げた。
日本格付研究所(JCR)は、「現在の厳しい事業環境の中で新規に携帯電話事業へ参入し、収益を確保するのは容易ではない」と指摘。さらに「設備投資のための資金調達残高は、ピーク時に現状の自己資本に相当する規模に達する見通しで、財務上の負担は重い」として、格付けにネガティブな影響が生じる可能性があるとの見解を示した。
通信工事会社にポジティブか
その一方で、楽天による携帯事業への新規参入は通信工事会社にとっては朗報になりそうだ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、コムシスHD(1721)、協和エクシオ(1951)、ミライトHD(1417)といった通信設備工事会社にとってポジティブと指摘。当初の設備投資額がどの程度になるのか不透明要因はあるものの、一定のスペックを備えた基地局投資が必要なため、工事量が増えるというシナリオが描け、早ければ2019年3月期にも工事発注がなされる可能性があるとみている。
クレディ・スイスでは、基地局の設置工事はコムシスHD(1721)や競合である協和エクシオ(1951)などが主に受注すると予想。株価にポジティブとの見解を示した。
【QUICKエクイティコメント・本吉亮】
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