株主優待、上場企業の35%が導入 長期保有優遇が大幅増 

日経平均株価の上値がやや重くなる中で株主優待制度に再び投資家の関心が向かいそうだ。制度を導入している企業数は過去最高水準に膨らみ、長期保有を促す仕組みと相まって個人株主づくりに貢献する。

優待は配当と並び、長らく個人株主が投資先を選別する際の重要なポイントとなっている。企業も安定株主づくりに向けて制度導入に意欲的だ。リーマン・ショック直後の2009~10年こそ導入企業数が若干の減少に転じたものの、11年以降は再び増加に転換。野村IRの調べによると、17年10月末時点では1409社が優待を実施する。5年前と比べて3割強の増加で過去最高を更新した。上場企業の35%が導入している計算だ。

「QUOカード」優待は2年で1.5倍

もともとは企業への理解を深めてもらう狙いもあって自社商品を贈るケースが多かったが、近年は異なった傾向もみられる。特徴的なのがQUOカードを優待に使う企業の増加だ。最終消費者向けの商品を扱っていないBtoB企業が積極的に参入し始めた結果と言え、17年10月末時点では319件と15年10月末時点(205件)と比べ1.5倍に急増している。

もっとも配当と性格が近いQUOカードについては、あえて優待品にする必要があるのか疑問視する投資家も多い。そのため「最近はゆかりのある土地の特産品を盛り込んだカタログギフトを利用するBtoB企業も増えている」(野村IRの福島英貴氏)といい、優待の魅力を高めようと企業も工夫を凝らす。QUOカードをはじめとした金券やカタログギフトで優待を実施する企業は、足元で541件にのぼる。

長期保有優遇が大幅増加

長期保有してくれた株主を優遇するタイプの優待制度の増加も近年の新しい動きだ。17年10月末時点では321件が同タイプを採用しており、14年10月末時点(124件)と比べ2.6倍に跳ね上がった。株の短期的な値動きに左右されず、長く保有してくれる株主を増やし、株価の安定や株主構成の充実につなげたいとの思いを企業が強めているからだ。

321件のうち59件は長期保有した株主のみが対象となる優待制度で、こちらも増える傾向にある。例えばキユーピー(2809)やコマツ(6301)は3年以上、焼津水産化学工業(2812)やビジネスブレイン太田昭和(9658)は1年以上の継続保有を条件に掲げる。高水準の株主還元要求や敵対的買収を仕掛けてきかねない「アクティビスト(もの言う株主)・ファンド」の根強い存在感が、長期保有優遇タイプを採用する一因として挙げられる。

相次ぐ不祥事、優待導入の背中押す?

興味深いのは優待制度を導入している企業の中で、個人株主に「不祥事があっても見捨てない」役割を期待する声がじわり高まっていることだ。野村IRの調査では、個人株主に求める役割として「不祥事などがあっても理解し、応援してくれる」との回答が14.1%と、前年から1.2ポイント、前々年と比べると1.9ポイント増加。水準としてはまだ高くはないが、着実に増えつつある様子がうかがえる。
 
東芝(6502)や三菱自動車(7211)、日産自動車(7201)、東レ(3402)など大手の不正が相次ぐ中、対岸の火事とは思えない企業が「ファンづくり」の必要性を痛感するのも無理はないかもしれない。14年に日本マクドナルドホールディングス(2702)の期限切れ鶏肉問題が発覚した際、客足が遠のく中でも株価の下げが限定的だったのは、個人株主に人気の優待が支えになったからとの指摘もある。

繰り返す優待の悲劇

もちろん、1単元でも持っていれば優待の対象になる企業は依然として圧倒的に多い。権利取り狙いで短期売買に勤しむ個人投資家は健在だ。目当ての優待を実施している企業の株を買うと同時に信用売りを出し、権利を確定したうえで反対売買する「両建て取引」を行い、価格変動リスクをなくす手法はよく知られている。

しかし同手法を活用する投資家が多いために、空売りをする投資家が株式を借りる際に払う手数料「逆日歩」が高騰するのも珍しくない。結果としてコストが優待サービスの価値と配当の合計額を上回る「優待の悲劇」がたびたび発生する。

権利獲得コスト

11月に権利付き最終日を迎えた優待銘柄では、キャンドゥ(2698)が2000円分のギフト券と850円の配当を得るために2900円のコスト、タマホーム(1419)も500円のQUOカードを手に入れるために900円のコストが発生した計算だ。12月も件のマクドナルドをはじめ様々な銘柄を対象に優待権利取りが活発化しそうだ。

【QUICKコンテンツ編集グループ・内山佑輔】

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