海外の為替プロが見る世界 どうなる?日本の総選挙、次期FRB議長

日本の総選挙や日米中央銀行の人事など投資家に転機となる可能性のある材料が相次ぐ。英米系投資銀行ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の通貨戦略責任者、マーク・チャンドラー氏に10月下旬投開票見通しの衆院選や各国金融政策の行方、次期米連邦準備理事会(FRB)議長の予想、中長期のドル円相場の見通しなどについて聞いた。

 

日本の総選挙は安倍・自民党の勝利の可能性が高い

――日本では安倍晋三首相が衆院を解散し、10月下旬に総選挙に踏み切るとの見方が強まっています。どのような展開を予想していますか。

「安倍・自民党の勝利の可能性が高いとみている。主な要因は2つある。ひとつは、最大野党の民進党は足元で離脱者も出るなど勢力の縮小傾向が止まらず、東京都議選で躍進した小池百合子都知事率いる地域政党で、側近の若狭勝衆院議員らによって進められている新党結成の準備も整っていない点だ」

「次に、自民党は夏以来、スキャンダルにより支持率を落としていたが、北朝鮮問題への強い対応で巻き返している。英国の欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票や米大統領選はサプライズとなったが、一方で欧州選挙はサプライズが起きなかった。日本の選挙は後者となるのではないか」

――安倍首相は2019年10月に予定される消費税率10%への引き上げで増える財源の使途変更を主要争点に据える考えだと伝わっています。裏を返せば、消費増税を実施することを意味しますが、この判断をどう評価しますか。

「過去、消費増税後に起きたことは、景気減速と(一時的な)インフレ上昇だ。19年10月に消費増税に本当に踏み切るのかどうか確証を持てないが、賃金が上がらない中での増税は日本の景気を押し下げる。米国では国内総生産(GDP)の7割を消費が占めるが、日本も同様に高水準を占めており、現段階では増税に動くタイミングではないと考える」

ドル円相場はいずれ上昇トレンド、上昇余地は1ドル=120円程度

■米10年債利回りとドル円の変化率

 

――10年近くに渡って続いてきた世界的な金融緩和政策に変化が出てきていますが、世界経済や投資への影響をどうみますか。

「先進7カ国(G7)ではカナダ、米国が利上げを実施し、英国も今後数カ月で利上げに踏み切る可能性が高い。こうした政策転換に対して各国の中央銀行は市場との丁寧な対話で金融政策の透明性とコミュニケーションを図っており、政策転換によってボラティリティー(変動率)が過度に高まるリスクをうまく抑えられるとみている」

「日本の投資家はより利益を享受するために、今後も相対的に高い利回りが見込める海外資産に目を向けることが考えられる。ただ、米国のヘッジファンドや運用会社は米国株を始めとするリスク資産について過大評価されていると警戒している。海外リスク資産の割高感が意識され、今後の調整余地に留意する必要も出てくる中で日本の投資家は厄介な状況に置かれているといえる」

――日米金融政策の方向性は明らかに違いますが、今年のドル円相場は円高トレンドで推移しています。現状の評価と今後の見通しを教えてください。

「2016年末は1ドル=116円台だったが、現在は110円台前半での動きとなっている。一つの要因としては、トランプ米大統領が掲げた減税や財政拡張策の実現性に対する懐疑的な見方が強かったことが挙げられる。米国の経済成長と物価上昇の加速に賭ける『トランプ・トレード』の流れで生じた円安・ドル高の巻き戻しが起きている」

「先行きのドル円相場を予想する上で日米金利差が重要だが、日銀は長期金利をゼロ%程度に誘導するイールドカーブ・コントロールを導入しており、米長期金利の行方がカギを握る。米10年債利回りとドル円の変化率をみると8割程度の相関が確認できる」

「先行きについては、米税制改正の実現や2018年の米中間選挙に向けた景気浮揚期待などを背景に米長期金利の低下トレンドが続くとは想定しづらい。また、日銀の金融緩和の流れも続く見通しで、ドル円相場はいずれ上昇トレンドへと回帰するだろう。2018年までを見通すと、ドルの上昇余地は1ドル=120円程度まであるとみている。一方、120円以上の円安が進めば、米当局によるけん制発言がドルの上値を抑えるだろう」

現FRB議長のイエレン氏が再任か

――2018年2月に任期満了を迎えるイエレンFRB議長の後任はズバリ誰だと予想していますか。

「イエレン現議長が再任される可能性が高いとみている。イエレン氏は民主党員であり、トランプ大統領が主張する金融規制の緩和などに慎重な姿勢をみせており、彼女の再任を信じていない市場参加者は多いようだ。ただ、イエレン氏は極めて適切な仕事をしており、量的金融緩和(QE)のテーパリング(段階的な緩和縮小)を進める中で経済をうまくナビゲートしている。利上げも慎重に進め、金融引き締めに積極的な『タカ派』色が強まることはないだろう」

「9月のQUICK月次調査<外為>で、日本の外為市場参加者は過半数がイエレン現議長の再任を予想しているとのことだが、とてもスマートな考え方だと思う。日銀の黒田東彦総裁も任期満了が近付いているが、物価上昇率2%目標を果たしたいと考えているのではないか。黒田総裁が再任されても驚かない」

~聞き手はQUICKロンドン支店長 荒木朋~

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