どうなる神戸製鋼所、3つのシナリオ

神戸製鋼所が品質データ改ざん問題に揺れている。海外メディアでは、「Kobe Steel Scandal」と見出しが躍る。今後はどのような展開が予想されるだろうか。例えば、神戸鋼が誰かに買収されるとすれば、どういったケースで誰に買収されるのか。ひとまず、神戸製鋼が経営破たん、債務整理という経過をたどらないという前提で考えてみよう。

1.債務過剰になったとき  ⇒ 業界再編の契機に

品質のデータ不正の発覚で、懸念されるのは顧客による損害賠償請求や、その損害を回復する費用がかさむことだ。神戸鋼の川崎博也会長兼社長は12日の記者会見で、顧客からの費用請求には応じる意向を示した。ただ、製品の信頼が低下して売上高は伸びにくいなかで、費用が膨らむとみられ、経営が圧迫される可能性は高い。金融機関の支援があったとしても中長期的に神戸鋼が債務に耐えられないと判断すれば、業界再編が想定されるとみられる。

その際、まず思い浮かぶのは新日鉄住金による買収だろう。同社は持ち分2.95%ながら、信託口を除けば神戸鋼の筆頭株主になる。以前は旧新日鉄、旧住金と神戸鋼の3社で株式を持ち合っていた。17日付の日本経済新聞朝刊によると、新日鉄住の進藤孝生社長が神戸鋼について「できることがあればやっていきたい」と述べたという。「データ改ざんが起きた原因や影響の分析が必要だ」と指摘しながらも、神戸鋼との関係強化に関心を示したともとれる。

2.きわめて大きな債務過剰になったとき ⇒ 海外企業の買収か、事業売却か

外国企業が動く場合

新日鉄住の時価総額は2兆5000億円、売上高もざっと5兆円といったところ。上場会社は株主に対する説明も必要で、無尽蔵に資金を拠出できるわけではない。仮に損害賠償なども含めて海外企業から巨額の費用が請求された場合、その費用の合計がかなり膨らむケースもないとはいえない。そうした場合に新日鉄住に代わる買い手として名前が上がるのは外国企業だろう。

神戸鋼の主要な海外の提携先は米USスチールと、中国の鞍山鋼鉄集団(遼寧省)などだ。それぞれ共同で自動車向けの超高張力鋼板などの生産会社を米国と中国で運営する。大きな負債を持つ状況の神戸鋼を資金力にまかせて丸ごと飲み込むようなケースを想定するならば、中国資本の登場を想定することになるだろうか。

分割して売却する場合

一方、神戸鋼の特徴といえば多角化だ。高炉を持ちながらもアルミや銅の事業にも幅広い販路がある。決算のセグメントを見ると、「鉄鋼」「アルミ・銅」のほか「機械」「エンジニアリング」「建設機械」「電力」「その他」と事業分野の幅は広い。ということは事業分野ごとに会社を分割して売却することができる。神戸鋼は否定したが、11日には子会社である神鋼不動産の売却も報じられた。

もっとも、東芝と同社の半導体メモリー事業にも見られるように、売却できるのは不正が起きなかった健全な事業分野ということになるだろう。素材事業以外にもデータ改ざんの問題が拡大するようなら、事業売却→賠償費用ねん出というシナリオは描きにくくなるとみられる。

3.資金繰りに問題が出ないケース ⇒ 業績への影響は軽微?

17日付の日本経済新聞朝刊などは「トクサイ(特別採用)」という「隠語」によって規格外品の出荷が常態化していたと指摘した。ただ製造業の現場から「特採」は隠語というよりも、むしろ日常語として使っているとの声が聞こえてきた。寸法など外形が規格に合わなくても、強度などに問題がなく正常な使用に耐えうる場合は、顧客と相談のうえで製品として出荷するケースが少なくないという。試しに「特採」をネット検索すると、ウィキペディアに英訳の「concession」「waiver」とあわせて詳しい解説を見ることもできた。

本当は規格外だった神戸鋼の部品を採用した三菱重工業のH2Aロケットは10日、準天頂衛星「みちびき4号」の打ち上げに成功した。JR東海(9022)も新幹線に使った神戸鋼の部品で安全性に問題はないと表明。タカタの欠陥エアバッグ問題のようは死亡事故も発生していない。勝手に約束を破った神戸鋼に非があるとはいえ、部品交換などの必要性が発生せず、今後の顧客との個別交渉で意外に問題が収束する可能性は残る。その場合は「業績への影響は軽微」ということになるだろう。

カギは顧客の損害の程度か

従って、カギになるのは、どの程度の損害が神戸鋼の販売先(顧客)に発生するのかという点だ。米国や欧州の自動車など消費者のもとに届く製品でリコール(無償修理・回収)などが発生すれば、賠償やリコール費用に加えて、当局による多額の制裁金を求められる可能性も出てくる。半面、現時点でも業績への影響が軽微に終わる可能性がゼロというわけでもない。

傘下の神鋼鋼線ステンレスで昨年発覚した日本工業規格(JIS)違反から続くさみだれ式の情報開示や、隠ぺいの可能性、ガバナンス不全など投資家サイドからみれば腹立たしいことは多い。今回も一連の取引先への情報提供と当局への報告は9月中に済ませたというのに、株主向けの発表は10月に入って1週間以上経過してからだった。だが、神戸鋼の技術や市場シェアなどが何らかの形で再び評価されるとの期待感は当面、株価の底を支えることにはなりそうだ。(山本学)

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