28日の東京株式市場で株主優待を巡るイベントが盛り上がった。6月と12月に決算を迎える主な企業の株主優待の権利をもらうには6月27日までに売買する必要があった。銘柄の価格変動リスクを負わずに株主優待だけを手にする「両建て取引」、「クロス取引」と呼ばれる手法が話題だ。
2017年6月の株主優待を狙った両建て取引では、期待通りに株主優待のみを確保できた投資家と高すぎる株主優待を手にしてしまった投資家と明暗が分かれた。
両建て取引とは
株主優待のある銘柄に対して株を買って優待の権利を確保、同時にその銘柄に信用売りを出す。その後に両取引を解消すると株価の変動リスクをなくして株主優待が手に入る。
ただし、信用取引の売り注文が膨らむと「逆日歩」が発生する。貸株が足りなくなると証券金融会社は大株主から株を調達する。その調達コストである逆日歩が膨らむと両建て取引を実行した投資家は高いコストを払って安価な株主優待を手にしてしまう。
またも湖池屋で2万円超のポテトチップス、1000円のクオカードも7000円に
湖池屋(2226)では2016年12月末と同様、株式市場において2万5000円を超える高額なポテトチップスが誕生した。
6月期決算の湖池屋(2226)の株主優待は1単元(100株)の場合、「1000円相当の自社グループ商品詰め合わせ(ポテトチップス)」だ。信用取引で空売りをする投資家が株式を借りる際に払う手数料「逆日歩」は27日に259円20銭だったため、両建て投資家は1000円のポテトチップスの組み合わせを手にするために2万5920円の手数料を支払った。
湖池屋は16年12月末も逆日歩のコストが膨らみ、1000円相当の株主優待を手にするコストが3万2000円と割高だった。
6月末に権利付き最終売買日を迎えた銘柄で、逆日歩は湖池屋が最も高かった。2位はマクドナルド(2702)の198円、3位はベルパーク(9441)の76円80銭だった。
■2017年6月末の逆日歩ランキング(QUICK端末内で見られるQUICK knowledge 特設サイトより )
マクドナルドの1単元(100株)の株主優待は「優待食事券1冊」だ。この株主優待はバーガー類、サイドメニュー、ドリンクの商品引換券が6枚ずつで1セットになっている。例えば380円のビッグマック、150円のマックフライポテト、220円のコカ・コーラを選択した場合は750円のセットを6回(合計4500円)、食べられる。
マクドナルドの27日の逆日歩は198円だった。1単元(100株)購入する手数料が1万9800円となったため、5000円前後の両建て投資家オリジナルセットは割高になった。
ベルパークの株主優待は1単元(100株)の場合、「1000円相当のクオカード」か「ベルブライド株主優待割引券 1枚」だった。ベルパーク株の逆日歩は27日に76円80銭だったため、両建て投資家は1000円のクオカードを手にするために7680円の手数料を支払った。
JTはほぼ定価、婚活パーティーや近江牛すき焼き肉がお得に
一方、両建て投資家の狙い通りになった銘柄もある。JT(2914)の1単元(100株)の株主優待は「1000円相当の当社商品から1点」だ。会社は株主優待の例として「ご飯詰め合せセット」や「スープ・調味料詰め合せセット」をあげている。JT株の逆日歩は27日に10円50銭だった。JT株に両建て取引を実施した投資家は、1000円のJT商品セットを手にするためにほぼ定価の1050円を支払った。
結婚相談所や婚活パーティーを手掛けるIBJ(6071)の1単元(100株)の株主優待は特製クオカードのほか、「PARTY☆PARTY運営の婚活パーティー無料招待券(4,000円相当)」だ。IBJの逆日歩は27日に15銭だったため、1単元(100株)を狙った両建て投資家のコストは15円に過ぎない。IBJ株に対して両建て取引を実施した独身の投資家は、今後の投資資金を保有しながら婚活パーティーに参加できる。
居酒屋チェーンのかんなん(7585)の1単元(100株)の株主優待は2500円相当の食事券か産地直送品だった。会社は産地直送品セットのイメージとして「漬け魚セット」、「たらばハーフカット」、「近江牛すき焼肉」をあげている。かんなん株は27日に逆日歩が発生しなかったため、両建て投資家は大金を費やさずに近江牛のすき焼きを味わえる。
◆逆日歩(ぎゃくひぶ)とは ◆
信用取引において信用売り(空売り)が、信用買い(空買い)を上回り、株券が足りなくなった場合、株を貸してくれる人に支払う貸株料のこと。通常の信用取引では、投資家が信用買い(空買い)をした際に徴収される金利を日歩といい、買い方が日歩を支払い、売り方が受け取る。これとは逆に、売り方が買い方に日歩を支払うことを逆日歩という。
【QUICKコンテンツ編集グループ:片野哲也】