29日の東京株式市場で株主優待を狙った投資家に毎年恒例の悲劇が起きた。買いと売りを組み合わせて価格変動リスクを負担せずに優待の権利を確保する「両建て取引」が活発化した。その結果、信用取引で空売りをする投資家が株式を借りる際に払う手数料の逆日歩が急騰、優待の商品価値より高い金を払う「優待割れ」が目立つ。
アドアーズ 「桐谷さん」のスパは一般客の2倍の料金に
株主優待で有名な「桐谷さん」も利用するアドアーズ株。株主優待は3500株で運営するスパ施設の「全身アロマトリートメントコース(120分)」または「わがままコース(120分)」で2万2000円相当のチケット2枚だ。アドアーズ株の逆日歩は28日に24円に急騰した。両建て取引の投資家は8万4000円を払って4万4000円相当のスパ施設のサービスを受けられる。結果的に両建て投資家は一般客の2倍の金を払う計算となる。
価格変動リスクを負わずに株主優待だけを受け取る両建て取引を市場は「わがままコース」と判断したようだ。
カネ美食品、1万6800円のビーフカレーが誕生!!
カネ美食品(2669)の株主優待は1単元(100株)の場合、3000円相当の「和牛ビーフカレー」や「かに缶詰・ふかひれスープ缶詰」など8種類の商品から選べる「セレクトグルメ配達便」。カネ美食品株において、信用取引で空売りをする投資家が株式を借りる際に払う手数料「逆日歩」は28日に前日比3360倍の168円(27日は5銭)に急騰した。結果的に、3000円相当の和牛ビーフカレーを1万6800円で購入した投資家も出ただろう。
中華料理店「大阪王将」を展開するイートアンド(2882)の株主優待は1単元(100株)で3000円相当の自社製品、中堅ファミリーレストランのココス(9943)の株主優待は1単元(100株)で1000円の食事券と飲食代金5%割引のカードだ。イートアンド株とココス株の信用取引で空売りをする投資家が株式を借りる際に払う手数料「逆日歩」は28日に100円超に急騰、両建て取引をした株主は1万円超の割高な食事券を手にしてしまった。
エバラ食品、永谷園は優待割れ回避 おいしい取引健在
エバラ食品(2819)の株主優待は1単元(100株)で焼肉のたれなどを含む自社製品1000円相当のセットだ。エバラ食品株の28日の逆日歩は1円65銭だったため、両建て投資家は165円で1000円の商品を手にするおいしい取引だった。
永谷園HD(2899)の株主優待は1単元(1000株)でお茶漬けなど自社製品3000円相当のセットだ。永谷園HD株の28日の逆日歩は1円65銭だったため、両建て投資家は1650円を払って3000円の商品を手にする。
【QUICKコンテンツ編集グループ:片野哲也】
(QUICK NewsLine)