QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。 (※この記事は2016年11月7日にQUICK端末で配信した記事です。)
インドネシア政府は税収の確保に苦戦
過去2年間、財政赤字が法定上限に達する危険性に直面したため、ジョコ・ウィドド政権は「経済回復のためにこれ以上財政拡大してはいけない」との決意を固めた。一次産品価格の低迷が家計、企業に打撃を与えており、政府は税収の確保に苦戦している。
インドネシア政府が2015年、赤字を法定上限である国内総生産(GDP)の3%に抑えることができたのは、土壇場で緊急性の低い政府支出を削減したためだ。今年は、積極的な支出削減に加え、比較的好調なタックス・アムネスティ(租税特赦)制度の運用を通じて100兆ルピアの税収の上振れが達成できれば、財政赤字はGDPの2.7%を超えない見通しだ。
(出所:QUICK)
政府は国債発行で388兆ルピア以上を調達
インドネシア政府は今年、これまでに国債発行を通じて388兆ルピア(300億米ドル)以上を調達した。これにより、金融機関の流動性が低下したことに加え、不良債権が膨らんでいることもあり、銀行はこれまで以上に融資を増やしにくい状況だ。
さらに悪いことに、インドネシアの国家予算は、2012年から基礎的財政収支が赤字の状態にある。GDPに占める基礎的財政収支の赤字額は、2012年(0.6%)から2015年(1.2%)に倍増した。負債を増やして調達した資金を、各地での道路や橋りょう、学校の建設ではなく、負債元本の支払いに充てていることになる。
このため、国会本会議で先週(10月26日)、赤字目標をGDPの2.4%に設定した2017年度予算案が成立したことに、多くの人が安堵感を示した。 バンク・ダナモン・インドネシア(コード@BDMN/JK)のエコノミスト、ウィスヌ・ワルダナ氏は、「今回の予算案には、『賄える範囲での支出』という考え方が示され、歳入次第という方針が堅持されている。必要な支出ありきで、歳入や調達資金を決めていたこれまでの予算案とは対照的だ」と述べている。
ワルダナ氏は、インドネシア政府が基礎的財政収支の赤字額目標をGDPの0.8%に縮小する方針を示すなど、来年度の予算に関して慎重になっていると指摘。「税収が目標を下回っている限り、重要性が低い支出を削減する方針は変わらない」と述べている。
インドネシアのスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相は、政府は今回の予算案では歳出のやりくりに注力したと説明。「政府は信頼感、安心感、信用を維持する必要がある。まず、我々が直面している経済の実情を予算案に反映させた」と述べた。
投資環境は改善しつつある
一方、投資環境の改善という明るい兆しもある。インドネシアは世界銀行の最新のビジネス環境レポートで順位を15ランク上げて91位となり、調査対象国の中で最大の伸びを示した。 世界銀行は、投資拡大と健全な財政政策が追い風になるとして、インドネシアの来年の経済成長率について今年の予想(5.1%)を上回る5.3%と予測している。
【翻訳・編集:NNA】
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