米国大統領選挙でトランプ氏が勝利して以降、円安が大きく進み、日本株も堅調に推移しています。結果が判明した当日の日本市場では円高・株安となりましたが、翌日以降の海外市場では逆の動きとなり、この流れが現在も続いている状態です。
実際、海外の金融市場のプロはどう見ているのか。QUICKの有料コメントサービス「QUICKデリバティブズコメント」から一部抜粋して、紹介します。
欧州でも政治リスク、長期金利の上昇後押し
<ING銀行 シニア金利ストラテジスト マーティン・ファンフリート氏(アムステルダム在勤)>
欧州市場でも国債利回りの上昇が目立つようになってきた。投資家が欧州の国債を手放そうとしている状況では、欧州の金融市場の成り立ちを改めて確認しておく必要がある。日米と違い、欧州経済通貨同盟(EMU)は財政に関する組織がない。欧州中央銀行(ECB)の量的緩和策(QE)を通じた持続的、永続的な国債購入に依存するにも限度がある。
そのうえで欧州債券市場でも政治リスクが意識されるのは、フランス極右政党の国民戦線(FN)やイタリアのポピュリスト政党である「五つ星運動」などの党勢が増しているためだ。これらの政党はEMUから「国」を奪い返したいと考えている。特にイタリアといった対GDPで債務比率の高い国で、財政赤字の拡大を伴う支出を増やし景気を刺激する経済政策へ舵を切る懸念が強まっている。
これらが下地にあった中で米大統領選でドナルド・トランプ氏が予想外の勝利をおさめ、欧州国債売りに拍車がかかった。だが、「トランプ次期大統領」を材料にしたリフレーション・トレードもいずれは落ち着く。14日の米市場で2.30%まで上昇した米10年物国債利回りはいずれ2.00%を割り込むと想定している。
イタリアで12月4日に憲法改正の是非を問う国民投票を控える。ECBは同月に来年3月に期限を迎えるQEの延長を決めるだろう。独10年物国債利回りも年末までに0.25%以下に低下するのではないか。
米連邦準備理事会(FRB)の12月利上げは既定路線になりつつある。その次の利上げ時期は2017年上半期、4~6月期になるだろう。ただ、米景気が緩やかに拡大し金融市場も良好な地合いを維持することが前提で、これには疑問も抱いている。
FRBは来年3月にも3回目の利上げが可能
<ドイツ銀行ウェルス・マネジメント アジア太平洋最高投資責任者(CIO) トゥアン・フイン氏>
今年12月に米連邦準備理事会(FRB)が2度目の利上げをすると予想している。2017年については2回以上の利上げを見込んでいる。経済指標とドナルド・トランプ次期大統領とその新政府が打ち出す政策によっては、17年3月にも3度目の利上げに踏み切ることも可能だろう。
最近の米労働関連の指標は製造業セクターのセンチメント改善の中で持ち直してきた。インフレ率も過去数か月で強含み始めている。トランプ新政権による財政拡張が予想インフレ率を一段と高めれば、FRBの利上げ回数は(市場の想定よりも)多くなるのではないか。
米大統領選以降、外国為替市場でドル相場が上昇基調を強めている。仮に円相場に一段と売り圧力が強まれば、日本株の上昇が潜在的な運用成績の向上につながると見ている。だが、円安は長くは続かないだろう。日本のインフレ率はまだ低水準。7~9月期の国内総生産(GDP)は予想を上回る伸びを示したが、先行きについては輸出に不透明感が漂ったままだ。日銀は政策目標の達成に向けて追加の金融政策を決定する必要に迫られる。
日本株の持ち高に関する評価は「ニュートラル(中立)」を維持しているが、今後の状況を見守っている最中だ。
(取材:QUICKデリバティブズコメント)
(編集:QUICK Money World)