外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の6月調査を、6月13日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者75人が回答、調査期間は6月6~9日)。この間の為替レートは、対ドルが106円97銭~107円73銭。対ユーロが121円59銭~122円44銭でした。
年内の米利上げ「1回」が大勢 時期は7月?12月?
マーケットでは5月に入り、早期の米利上げの思惑が広がる場面もありましたが、6月3日に発表された5月の米雇用統計の数字によって、少なくとも6月利上げの線はほぼなくなったとの見方が出ています。失業率は4月の5%から5月は4.7%に低下したものの、非農業部門雇用者数が事前予想の16万人増を大きく下回る3.8万人増に留まったためです。
過去2年程度の非農業部門雇用者数の推移をみても最も悪かった2015年3月で12.6万人増でした。他の月は、概ね20万人前後の増加で推移しており、5月の数字(3.8万人増)はいかにも悪い数字にみえるのは、致し方のないところでしょう。
こうした状況もあり、FRBが年内に何回利上げを行うと思うか聞いたところ、「1回」という回答が最も高く53%を占め、「2回」の43%を上回りました。
FRBが年内利上げに踏み切るタイミングについては、「7月」が最も多く54%、次いで「12月」が46%、「9月」が31%で続きました。仮に7月の利上げが実現しなければ、11月の米大統領選などのイベント前に一段と金融の引き締めは行いづらくなる可能性もあります。6月の雇用統計を含め今後の米経済指標の内容は非常に大きな影響を及ぼすことになりそうです。
6~7月の米利上げ、リスク資産の下落は不可避か
こうした米経済に不透明感も漂う中で仮にFRBが6月もしくは7月に利上げを行った場合、各マーケットにはどのような影響が及ぶでしょうか。
世界の株式相場、NY原油先物相場、新興国通貨の値動きを予想してもらったところ、それぞれで最も多かった回答は「下落」となりました。
イエレンFRB議長は金融引き締めについては「緩やかに行う」とのメッセージを市場に発信し続けていますが、今回の結果は、利上げが実施されればリスクオフに陥ることは避けられないことを示唆しています。仮に慎重に利上げを実施してもマーケットはひと波乱が起きる可能性に留意しておく必要がありそうです。
増税延期、日銀金融政策への影響は? 6月緩和説は後退
日本国内においては、安倍首相が2017年4月に予定されていた消費税率の8%から10%への引き上げを2019年10月まで2年半延期することを表明しました。消費増税延期が、日銀の金融政策にどのような影響を及ぼすのかを聞いたところ、「特に影響しない」が45%で最も高く、次いで「追加緩和圧力が増す」が31%でした。
また日銀の年内の金融政策については、「7月に追加緩和」という見方が41%と最も多く、「6月に追加緩和」の20%を上回りました。ちなみに前回5月調査では「6月に追加緩和」が53%で、「7月に追加緩和」は22%でした。
結果をみると、早期の追加緩和観測が後退した格好となっていますが、足元の外国為替市場では再び円高が進み、日経平均株価も軟調に推移しています。これまでの黒田日銀の政策手段をみるとサプライズを演出することが多かったという事実があります。期待が後退する中で6月の追加緩和に踏み切ればマーケットへのインパクトも大きくなるとみられるだけに、黒田日銀がどういう動きをみせるか、目が離せません。
為替見通しは円高方向に
毎月定点調査している金融機関の外為業務担当者の為替見通しによると、6月末の平均値で108円01銭となり、前回調査の109円48銭に比べて円高方向にシフトしました。
前述したように、5月の米雇用統計の数字が非常に悪かったことが影響しています。マーケット関係者の間では、7月に利上げを行うという見方が多いようですが、ここから先、さらに雇用が悪化する指標が相次げば、GDPの7割を個人消費が占める米国経済にとって、ネガティブインパクトになり、株売り・ドル売りにつながる恐れは十分に考えられます。
今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、円は「金利/金融政策」が前月比で9ポイント上昇し62%になりました。米ドルは前月比で大きな変化はみられなかったものの、やはり「金利/金融政策」が69%と高い水準を維持。一方、ユーロの「金利/金融政策」に対する注目度は、前月比で10ポイント低下しました。
また、向こう6カ月間で各通貨は対円でどのように推移するかとの質問については、米ドルDIの上昇が一服。ユーロDIは3月のマイナス53から徐々に改善し、6月はプラス5まで上昇してきました。また、スイスフランDIがマイナス12からプラス22に大幅上昇。NZドルやブラジルレアル、インドルピー、ロシアルーブルの各DIもマイナス圏からプラスに転じました。
新興国通貨のアンダーウエート比率高まる
ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面のスタンスは「オーバーウエート」と「ニュートラル」が若干上昇した半面、「アンダーウエート」は低下しました。比率で見れば、ニュートラルが圧倒的に高く、ポジションをどちらにも傾けにくい状況にあるようです。
また、為替ヘッジに関する当面のスタンスは、「現在のヘッジ比率を維持」が再び上昇傾向をたどり、「ヘッジ比率を下げる」が低下。「ヘッジ比率を上げる」が0%のままでという点から考えると、やはりここから先、円安に向かうのか、それとも円高に向かうのか、様子をうかがっている雰囲気が感じ取れます。
個別通貨についてみると、外貨建て資産のうち、各通貨の組入比率について当面、どのようなスタンスで臨むかを聞いたところ、オーバーウエートからアンダーウエートを差し引いたDIで、米ドルはプラス45からプラス33に低下。ユーロ、英ポンド、スイスフラン、資源国通貨はいずれもマイナス圏で、アンダーウエートではあるものの、前月に比べてマイナス幅は縮小。逆に同じマイナス圏でも、新興国通貨のDIは、前月のマイナス25からマイナス45になり、大幅なアンダーウエートになりました。