総務省が26日に公表した2017年のCPI(消費者物価指数)は値動きの激しい生鮮食品を除く総合で年平均100.2と、前年比0.5%上昇。2年ぶりにプラスに転じましたが、エネルギー価格の上昇によるところが大きく、需要拡大がけん引する物価上昇は限られています。1月の「QUICK月次調査<債券>」※では、日本の期待インフレ率の方向性について聞きました。調査期間は1月23~25日、回答者数は証券会社および機関投資家の債券担当者143人です。
※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。
期待インフレ率、2%遠く 「0.8~1%に上昇」が4割超
足元の物価上昇率は目標の2%にはほど遠いものの、国内の金融市場で物価の上昇見通しが強まりつつあります。10年物国債と物価連動債の利回りの差で算出する、期待インフレ率を示す「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」は昨年秋から上昇基調を強め、1月17日時点で0.630%前後と2017年1月4日以来、約1年ぶりの高水準となっています。日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)によって10年物国債の利回りがゼロ%台で推移するなか、物価連動国債の利回り低下(価格上昇)がBEIを高めています。
そこで、日本の10年BEIの年内の方向性の予想を聞いたところ、最も多かったのは「0.8~1%に上昇する」で46%、次いで「ほぼ横ばい」が33%、「1~2%に上昇する」が18%でした。日銀が目指している「2%超に上昇する」との回答は1%にとどまりました。
市場関係者からはBEIの上昇について「原油上昇や日本のCPIが強い結果となっていること、グローバルBEIが強くなっていることが大きな背景」との指摘がありました。一方で「さらなる上昇はYCC解除による名目金利上昇やCPIが1%を超える展開にならなければ難しい」との見方もありました。
期待インフレの変化要因 「賃金」が4割弱で最多
BEIの今後の変化の要因として最重視しているものは何ですか、と聞いたところ、最も多かったのは「賃金」で39%(55票)、次いで「原油価格」が29%(41票)、「金融政策」が10%(14票)、「債券需給」が8%(11票)、「為替相場」が6%(9票)、「GDPギャップ」が5%(7票)でした。その他では「CPI」「消費」「株価」「企業業績」などがあがりました。
2018年の労使交渉に関して経団連は「賃上げ3%」という異例の目標を打ち出しています。市場関係者からは「賃上げと消費税増税を控えた駆け込み需要、原油価格上昇などの要因が重なり、18年度後半には物価上昇率2%が展望できる状況になる可能性がある」といった声がありました。「広範に『ステルス値上げ』が始まり、消費金額全体は野菜の値上がりも含め増えるが、決して消費が堅調なわけではない。パートの時間当たり賃金は最低賃金の上昇率と歩調を合わせているが、中小企業の正規社員の賃金(受取総額)が増えるかに注目したい」といった回答もありました。