なぜ個人マネーは投資に向かわないのか QUICK月次調査<株式>

日経平均株価は11月9日の取引時間中に2万3382円を付け、1992年1月以来、約26年ぶりに2万3000円台を上回りました。しかし12月6日には今年最大の下げ幅(445円)を記録。投資家心理が揺れ動く中、年末に向け2万3000円の節目を超えられるか注目が集まります。毎月実施している株式の市場関係者を対象とした「QUICK月次調査<株式>」では、来年1月に始まる「つみたてNISA」などについて聞きました。調査期間は12月5日~12月7日で、証券会社および機関投資家の株式担当者159人が回答しました。

※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。

 個人の投資が進まない理由は「成功体験がないこと」が最多

国内の銀行や保険で、個人投資家向け資産運用事業の取り組みへの参入、強化が相次いでいます。日銀のマイナス金利政策による低金利の長期化で貸付業務の伸びを見込みにくい中、約1800兆円もの個人の金融資産は半分以上が預貯金に滞留し、成長余地が大きいとみて資産運用業務を拡大する方針のようです。

では個人の金融資産が長期間にわたり預貯金に偏在する要因を聞いたところ、最も多かったのが「有価証券投資の成功体験がないこと」で36%でした。次いで「金融リテラシーが低いこと」が30%、「デフレ環境下で投資の必要性を感じないこと」が14%、「魅力的な金融商品が乏しいこと」が8%、「金融機関の信頼度が低いこと」が4%で続きました。

個人の金融資産

「その他」では「個人の現預金主義」「投資をギャンブル扱いする姿勢が変わらない」「家屋や土地などの実物資産の流動性が低い」といった日本特有の国民性の指摘や、「インフレリスクの警戒で将来への不安の方が強い」「大きなバブル崩壊を経験したため、リスクに対する警戒感が根強い」「大きく儲かることもあるが、損が出やすいと考えている」など警戒感の強さをあげる意見が多くあがりました。

また「選択肢のほぼすべてが当てはまる。より一層の投資教育と金融機関の信頼性の改善、国内におけるデフレの脱却が求められ、現状では貯蓄から投資へ向かうためのツールもリソースも環境もすべてが足りていないことが理解できる。短期的で単一的な政策では、貯蓄から投資に向かわせるのは容易でない」といった声も聞かれました。

では、政府が掲げてきたスローガンでもある「貯蓄から資産形成へ」の転換を進めるために何が必要ですかと聞いたところ、最も多かったのは「小・中学校からの金融教育」で35%でした。ほかは「デフレからの脱却など投資環境の改善」が28%、「投資拡大に向けた税制の一層の整備」が25%、「フィンテックの活用など金融商品・サービスの一層の充実」が4%、「フィデューシャリー・デューティーの定着」が3%という結果でした。

貯蓄から資産形成へ

「その他」では「表面的な施策ではなく、経済・生活など根本的な環境を変えないと無理」「資本があって経済があり、そこから所得や貯蓄が生まれて資本へ循環する、その流れを教育する」といった抜本的な環境変化を望む声や、「安価で魅力的な金融商品の提供」「個人が安全に資産形成できる、新しい金融商品の開発及び提供と後押しする制度」などを挙げる声もありました。

市場関係者からは「政府が主導する賃上げで恩恵を受けるのは主に若年層、低所得者層であり、こうした層の所得が数%増えたところで投資へは回らない。一方で本来、投資へ振り向ける余裕資金があるはずの層は所得減と増税のダブルパンチに見舞われていることを考えると、貯蓄から投資へという流れは出来にくい」といった指摘もありました。また「金融教育」に関しては、「社会人に対しての職場等での投資教育も必要」「金融経験者が退職後に金融教育に携わることができるような制度を整備してもよいのではないか」といった声もあがりました。

 つみたてNISAは効果を見込む声が7割

積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)が2018年1月に始まります。年間40万円までの投資で得る運用益が20年間非課税になる制度です。若年層を含めた新たな投資家を取り込むきっかけになると期待を集める一方で、販売会社からは目先の収入の少なさや認知度の低さを課題に挙げる声も少なくありません。

この制度が個人の資産形成に大きな転機をもたらすと思いますか、と聞いたところ、最も多かったのは「一定の効果はある」で61%となり、「長期的にみると大きな転機になる」(8%)を合わせると約7割が何らかの効果があるとみていることがわかります。一方で「何も変わらない」とみる回答も3割にのぼりました。

つみたてNISA

市場関係者からは「恒久的な制度としてほしい。20年の限定的な制度では、年々積み立て期間が短くなり、効果が薄まり制度の魅力を損なう」「“やってみよう感”は出るだろうが、最初は小規模なので総額もわずかだろうし、出足で損をすれば立ち消えになるリスクがある」「長い目で見て有効な手法だろうが、子供や若年層は金融資産を持っていない。個人金融資産の大半を占める高齢者の資金が動かない限り、偏在は是正されない」などの指摘が寄せられました。

日経平均予想は2万2620円 調査開始以降の最高水準

「QUICK月次調査<株式>」で毎月調査している日経平均株価の見通しは、12月末の水準で2万2620円(平均値)でした。前回調査(確報)の2万2130円から3カ月連続で上方へシフトし、1996年7月調査の2万2459円を上回り、QUICK月次調査<株式>の調査開始(1994年4月)以降の最高水準となりました。18年2月末には2万2762円、5月末は2万3257円を見込んでいます。今後6カ月程度の株価の変動要因としては、「景気・企業業績」の注目度が引き続き高くなっています。

国内の資産運用担当者58人を対象にセクター別の投資スタンスについて質問したところ、オーバーウエートの比率が最も高かったのは「電機・精密」で23%、次いで「鉄鋼・機械」が17%、逆にアンダーウエートの比率が最も高くなったセクターは「公益」でした。

※「QUICK月次調査<株式>」はヒストリカルデータも含めて、QUICKの情報端末からダウンロードできます。

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