米国や英仏などと比較して政治が相対的に安定していた日本ですが、衆院の解散・総選挙により先行き不透明感が広がっています。毎月実施している「QUICK月次調査<債券>」※を通じて、債券のプロに衆院選の行方を聞いたところ、与党勝利が大半を占める予想となり、政権交代は難しいとの見方です。調査期間は9月26~28日、回答者数は証券会社および機関投資家の債券担当者138人です。
※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。
衆院選の結果予想は「与党勝利」が8割以上
9月28日、衆院は本会議で解散し、臨時閣議で10月10日公示、22日投開票の衆院選の日程を決定しました。野党第1党の民進党は、小池百合子東京都知事が代表を務める新党・希望の党との事実上の合流を決めるなど、選挙戦は波乱の様相を呈しています。
ただ、債券市場関係者は今回の選挙結果について「与党勝利」が83%と予想しており、自民・公明が引き続き政権を握るとの見方です。市場関係者からは「与党勝利を予想するが、投票率が上昇すると与党が劣勢になる可能性がある。与党が辛勝だった場合、安倍首相の求心力が低下し、金融政策や日銀総裁人事に影響を及ぼし、場合によっては、首相交代も意識される可能性がある」といった声が聞かれました。
総選挙の主要なテーマについても聞いたところ、「財政問題(消費税の使途変更・健全化目標先送り)」が47%と最も多くなりました。安倍首相は2019年10月の消費増税に伴い、増収分の使途の一部を借金返済から2兆円規模の子育て支援や教育無償化などに充てると提起しました。
一方、小池氏は消費増税の凍結を主張しているため、与野党どちらが勝ったとしても財政が悪化する点を債券関係者は問題視しているようです。
10年国債は「横ばい」、日経平均は「上昇」
さらに衆院選の結果を受けた金融市場の見通しについて質問したところ、10年国債利回りは「横ばい」が65%、日本国債の格付けは「据え置き」が80%で最も多くなりました。また、日経平均株価は「上昇」が50%、円・ドル相場は「横ばい」と「円安」の予想が拮抗する結果になりました。
市場では「与党が勝利することを予想しており、アベノミクス継続から金融政策の方針が変わることはないとみている。仮に与党が惨敗した場合でも、ポピュリストと目される小池氏が株安・円高につながる緩和縮小を推し進める可能性は低いとみており、結局のところ選挙の結果に関わらず金利は低位に推移することが考えられる」といった見方もあります。
債券価格変動要因は海外金利に注目が集まる
毎月定例の相場見通しの調査では、前回に比べて利回り上昇を予想する結果になりました。新発10年物国債の金利見通しは、1カ月後が0.052%、3カ月後が0.062%、6カ月後が0.076%と、8月調査(0.029%、0.048%、0.067%)に比べていずれも上昇しました。今後6カ月程度で注目する債券価格変動要因で最も多かったのは「海外金利」が42%、次いで「短期金利/金融政策」が37%でした。
資産運用担当者66人(ディーリング部門除く)を対象に、現在運用しているファンドについて国内債券の組み入れ比率について聞いたところ、「ニュートラル」が前回より6ポイント低下の59%となった一方、「かなりアンダーウエート」が9%で5ポイント上昇しました。