10月22日に投開票された衆院選で与党が圧勝した。安倍政権が進めるアベノミクスや現行の緩和的な金融政策が継続するとの安心感が広がり、23日の日経平均株価は15営業日連続で上昇。24日には16連騰と史上最長記録を更新しました。そこで毎月実施している「QUICK月次調査<債券>」※を通じて、衆院選後のアベノミクスや消費増税などの経済政策について聞きました。調査期間は10月24~26日、回答者数は証券会社および機関投資家の債券担当者141人です。
※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。
消費増税8割支持も、使途変更に異議あり
今回の衆院選で自民党は6議席減らしたものの284議席を獲得、単独で過半数を大きく上回りました。連立を組む公明党と合わせて、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の310議席以上を得る大勝となりました。安倍晋三首相(自民党総裁)は23日の記者会見で、教育無償化やその財源となる消費増税の使途見直しの具体策を年内に策定する意向を示し、政権最大の課題であるデフレ脱却を目的としてアベノミクスの再起動を図るようです。
衆院選結果を受けて、アベノミクス(旧三本の矢)の行方はどうなると思いますか、と聞いたところ、最も多かったのは「アベノミクスの維持」で6割を占め、7月調査で75%と最も多かった「アベノミクスの部分的な見直し」は3割にとどまりました。与党の勝利でアベノミクスが信任を得たとみる市場関係者が多いようです。
現行の金融政策継続との見方が強まる中、イールドカーブ・コントロールが改めて意識されるとの声が聞かれます。「日銀の中曽宏副総裁が18日のニューヨークでの講演で『必要ならイールドカーブの形状についても調整する』と発言したことに注目しています。近い将来、金利操作目標の引き上げ等があると予想しています」といった意見もありました。
2019年10月に消費税率を10%に引き上げる予定についてどのようにお考えですか、と聞いたところ、「予定通り10%に引き上げ、大半を国の借金返済に充てるべき」が5割を占め、「予定通り10%に引き上げ、教育無償化などに使途変更すべき」(21%)に大差をつけました。「デフレ脱却が確実になるまで、消費税10%は先送りすべき」(14%)と「消費税減税すべき」(4%)を合わせても反対は2割弱。「税率10%を上回る水準への消費税増税すべき」(7%)を含めると消費税率の引き上げを支持する声が8割を占めたものの、安倍首相が表明する使途変更には待ったをかける結果となりました。
市場関係者からは「(与党が大勝したものの)国民は消費税率引き上げと教育等への使途変更を容認したものではない。今後、各論での反対が出てくるだろう」、「財政健全化、消費拡大を目指すのなら、消費税率を引き上げると同時に所得減税するなど、可処分所得を増やす工夫も必要か」といった指摘もありました。
政府のデフレ脱却宣言は「しない」との予想が最多
安倍首相は10月26日の経済財政諮問会議で、来年の春季労使交渉をめぐって賃上げを要請しました。消費増税分の使途を変更し、国の借金返済を後回しにしても子育て世帯への支援を優先することで個人消費を支える一方、企業の賃上げを通じた家計所得の引き上げで消費拡大の実現を促し、デフレ脱却につなげたい考えのようです。
では、政府のデフレ脱却宣言の時期はいつになると思いますかと聞いたところ、最も多かった予想は「(デフレ脱却宣言は)しない」で25%、次いで「2019年度中」が19%となりました。市場関係者からは「物価の前年比上昇率が安定的に2%を見通せる状況になることは考えづらい」という見方が多く、時期を予想することは困難との意見が大半を占めました。一方で「消費税率引き上げを行う方便の一つとしてデフレ脱却宣言を行う基準を引き下げる可能性はある」、「政治的効果のありそうな参議院選挙前ではないか」との予想もありました。
政府のデフレ脱却宣言等、日銀の現行の異次元緩和を縮小できる環境になった場合、最初の手段は何だと思われますかと聞いたところ、「長期金利目標の引き上げ・解消」が最も多く60%、次に「国債買い入れ額の明示的な縮小」が36%、「ETF・J-REITの買い入れ額縮小」が32%、「マイナス金利の解除」が26%、「社債・CPなどの買い入れ額縮小」が14%という結果になりました。
国債組み入れ比率、「ややアンダーウエート」が増加
毎月定例の相場見通しの調査では、前回に比べて利回り上昇を予想する結果になりました。新発10年物国債の金利見通しは、1カ月後が0.066%、3カ月後が0.075%、6カ月後が0.090%と、9月調査(0.052%、0.062%、0.076%)に比べていずれも上昇しました。今後6カ月程度で注目する債券価格変動要因で最も多かったのは「短期金利/金融政策」が46%、次いで「海外金利」が35%でした。
資産運用担当者69人(ディーリング部門除く)を対象に、現在運用しているファンドについて国内債券の組み入れ比率について聞いたところ、「ニュートラル」が前回より5ポイント低下の54%となった一方、「ややアンダーウエート」が39%で13ポイント上昇しました。