外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の1月調査を、1月18日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者74人が回答、調査期間は1月12~14日)。
年初から日経平均株価が戦後初めて6営業日連続安になり、欧米を始め世界的に株価が急落していることを受け、マーケットでは急速にリスク資産を敬遠する動き(リスクオフ)が強まっています。米連邦準備理事会(FRB)は昨年12月に9年半ぶりとなる利上げを決めましたが、今回のマーケットの大混乱を受けて市場関係者の先行き見通しはより慎重になっています。
米利上げペースは鈍化やむなしか
今回のアンケートでは、2016年に米利上げが何回行われるのかを予想してもらいました。それによると、「2回」という回答が全体の46%を占めて最も多く、次いで「3回」が36%となりました。
また、利上げ時期については、「6月」が最も多く71%、次いで「12月」が68%、「3月」が47%という順番になりました。
FOMCメンバーの政策見通しによれば、2016年は4回の利上げを見込んでいます。しかし、それも今年に入ってからのマーケットの混乱が長引くようだと、かなり難しくなる可能性が高そうです。このまま世界的に株安が続くようだと、ここからの利上げは逆に実体経済にもマイナスの影響を及ぼすことになりそうです。
中国景気失速、新興国・資源国市場の混乱の影響注視
今回の世界同時株安は、中国リスクや地政学リスクが混然一体になっています。中国経済のスローダウンと資産バブル崩壊に対する懸念が原油価格の下落につながり、原油価格が下がるから、ロシアやイランなどの産油国で経済の混乱や暴動などの懸念が強まるという悪循環に陥っています。この負の連鎖が封じ込められない限り、マーケットの混乱は続く可能性が高いでしょう。
こうした状況下、「米利上げペースが想定よりも鈍くなるリスクとして最も影響する材料やイベント」について聞いたところ、「新興国・資源国市場の混乱」が23%でトップ。次いで「米雇用の改善ペース鈍化」と「中国景気の一段の失速」がそれぞれ15%、次に「米賃金上昇率の低迷」と「原油価格の下落」がそれぞれ14%となりました。
年内の日銀金融政策「追加緩和あり」7割強
日本の投資家にとって気になるのは、日銀が追加緩和に動くのか、そしていつ実施するのか、という点でしょう。日経平均株価は一時1万7000円を割り込みましたが、投資家心理の冷え込みは市場のインフレ期待の低下につながる公算が大きく、そうなればいよいよ真剣に政策発動が検討されることになるかもしれません。夏に控える参院選挙を考えれば、政権与党としてはこのまま株価が下がるのを黙って見ていることは出来ません。財政出動や追加緩和などの政策発動に対する期待感も高まります。
2016年の日銀の金融政策をどう予想するか聞いた設問では、2016年中の「追加緩和なし」との回答が27%で最も多かったものの、裏を返せば7割強は追加緩和を見込んでいることになります。追加緩和の時期としては「4月」が23%で最多となり、次に「3月」(19%)、「1月」(14%)と続きました。今後もマーケットの混乱や景気の先行き不安が台頭する局面では政府・日銀の政策対応への期待が高まりそうです。
1月末の円ドル相場予想1ドル=118円41銭
毎月定点調査している為替相場見通しによると、金融機関の外為業務担当者の為替見通しは、1月末の平均値で1ドル=118円41銭となり、12月調査分の122円91銭に比べて大幅な円高・ドル安見通しとなりました。
為替レートに影響を及ぼす注目度としては、円、ドル、ユーロともに「金利/金融政策」が最も高く、特に円については前月に比べて15%も上昇しています。
また向こう6カ月の間に、主要通貨が対円でどのように推移するかを聞いたところ、米ドルDIは12月調査分の43から、1月調査分は18に急落しました。先々の、米ドルに対する先高観が大幅に後退していることを示しています。また、米ドル以外の通貨については、豪ドルやNZドル、ロシアルーブルといった新興国、資源国通貨のDIのマイナス幅が拡大しており、リスクオフムードが支配する中で円が買われやすい地合いになっていることを示しています。
外貨建て資産の組み入れ比率について当面のスタンスは、10月、11月、12月と0%が続いた「アンダーウエート」が、1月調査分では18%に上昇しました。その一方、「オーバーウエート」は12月調査分の25%から18%に低下。「ニュートラル」も75%から64%へと低下しており、外貨リスクについて慎重な姿勢が目立ちました。
ちなみに、業績予想の前提となっている事業会社の為替レートは、米ドルが1ドル=118円04銭でした。現状、米ドル・円のレートは、これよりも円高・ドル安水準にあり、日本の輸出企業の業績に及ぼす影響も懸念されるところです。