外国為替市場を対象として毎月実施している市場心理調査「QUICK月次調査<外為>」の10月調査を、10月17日に発表しました(金融機関、運用会社および事業法人の為替担当者71人が回答、調査期間は10月7~13日)。この間の為替レートは、対ドルが103円52銭~103円92銭。対ユーロが114円36銭~115円48銭でした。
米大統領選、クリントン候補の勝利でほぼ確定?
米国の大統領選挙まで、あと1カ月を切りました。一時は共和党ドナルド・トランプ候補の予想外の健闘ぶりに、大統領選挙レースの行方が分からなくなり、それがマーケットのかく乱要因になることもしばしばありましたが、度重なる失言、過去の不適切映像などがメディアを通じて広まり、共和党内も一枚岩ではなくなったことから、民主党ヒラリー・クリントン候補の優位性が高まってきています。
もちろん、大統領選挙なので終わるまでどうなるかはわかりませんが、少なくとも現時点において、トランプ候補が形成を逆転させ、大統領の座を射止めるのは、非常に難しいことと思われます。
今回のアンケート調査では、ヒラリー・クリントン候補とドナルド・トランプ候補のどちらが勝利すると予想しますかと質問したところ、「民主クリントン候補」との回答が90%を占めました。
マーケット関係者をはじめとして、圧倒的に多数がクリントン候補の勝利を信じているといっても良いでしょう。
では、それぞれが大統領になった時、ドル円相場にはどのような影響が及ぶのでしょうか。
まず、クリントン新大統領が誕生した場合は、「緩やかな円高圧力」が41%で、「ほぼ影響なし」が40%、「緩やかな円安圧力」が17%でした。
これに対してトランプ新大統領が誕生した場合だと、「強い円高圧力」が51%で、「緩やかな円高圧力」が43%、「緩やかな円安圧力」が4%でした。実に「円高圧力」との回答は94%に上ります。
2人の予測を比較すると、仮にトランプが大統領になった場合は、ほぼ有無も言わさずに円高圧力が強まると思われます。もちろん、現状の予想ではトランプ候補が大統領になる可能性は極めて低い状況になっていますが、「まさか」が現実になった場合は、外国為替市場において、特大のサプライズということもあり、急激に円高が進でしょう。
次に、日米の金融政策についてですが、年内、FRBが利上げを実施するかどうかについての質問は、「12月に利上げ」が81%、「11月に利上げ」が4%で、年内に利上げを実施すると見ている人の割合が圧倒的に多いことに加え、その時期は12月であることが分かります。逆に、「追加利上げなし」との回答は14%にとどまりました。
日銀の新しい金融政策の枠組み、「緩和強化・縮小」で二分
次に日銀の金融政策はどうでしょうか。9月20~21日に開催された金融政策決定会合において、日銀は長短金利を政策運営の目標とする新しい金融政策の枠組みを導入しましたが、これは金融緩和の強化・縮小のどちらを意識したものか、という質問に対しては、「金融緩和の縮小」と見る向きが54%、「金融緩和の強化」が46%で、見方が二分されています。
また、日銀の年内の金融政策については、「追加緩和なし」が89%を占めており、追加利下げはないと見る向きが大半を占めています。また少数ではありますが、年内に利下げが行われると見る人のうち、「12月に追加金融緩和」が9%、「11月に追加金融緩和」が3%という結果になりました。
そして、来年前半にかけてのドル円相場については、「円安・ドル高トレンドに転換する」が36%で、「方向感が定まらずもみ合いが続く」が34%、「円高・ドル安トレンドが続く」が27%となりました。
結果としてドル円相場の方向性について市場関係者の明確なコンセンサスは見出せませんでした。しかし、足元では1ドル=104円台まで円安・ドル高が進む場面もあり、これまでの円高・ドル安の流れにやや変化が出始めた兆しもみられます。今後のドル円については、円安トレンドへの転換も含めて相場見通しが語られる場面も増えてきそうな予感もあります。
今後の見通しは円安方向
ドル円相場については、金融機関の外為業務担当者の1カ月後の為替見通しが、前回調査の1ドル=102円43銭に比べて円安方向にシフトし、103円26銭になりました。さらに3カ月後は104円ちょうど、6カ月後は104円28銭というように、徐々に円安方向へと進む予測が大半を占めています。
これに対してユーロ円は、1カ月後の1ユーロ=114円48銭から、3カ月後は114円30銭へと円高方向に進むという見方です。
今後6カ月程度を想定した為替変動要因で注目されるものとしては、円は「政治/外交」が前月比で12ポイント増、「景気動向」が10ポイント増になったのに対し、「金利/金融政策」が22ポイントのマイナスになりました。
ドルについては「政治/外交」が前月比で17ポイント増になった半面、「金利/金融政策」が17ポイントのマイナス。ユーロは「政治/外交」が24ポイント増になったのに対し、「金利/金融政策」が32ポイントのマイナスになりました。円、ドル、ユーロのいずれも、関心の対象は同じ傾向が顕著に表れています。
また、向こう6カ月間で、各通貨が対円でどのように推移するのかについては、米ドルDIがやや低下したものの、プラス37で他の通貨に比べて相対的に買い意欲の強い状況が続いています。豪ドルやNZドルロシアルーブルのDIもプラス幅が拡大しました。
逆に、ユーロや英ポンドDIはマイナス幅が拡大。特に英ポンドは、前回調査のマイナス18から、今回調査ではマイナス73へと、マイナス値が大幅に上昇しています。
ヘッジ比率は現状維持
ファンドの外貨建て資産の組入状況について、当面どのようなスタンスで臨むのかを聞いたところ、「オーバーウエート」は0%で変わらず。「ニュートラル」が88%から71%に低下する一方で「アンダーウエート」が13%から29%へと上昇しており、やや外貨投資には消極的なスタンスが見て取れます。
また為替ヘッジについて当面のスタンスを伺うと、「ヘッジ比率を上げる」という回答は0%で、「ヘッジ比率を下げる」が17%から14%に低下。「現在のヘッジ比率を維持」が83%から86%に上昇しました。外貨投資に対してはやや消極的だけれども、現状のポジションについて、ヘッジ比率を高めるほどの円高は見込んでいないことが分かります。